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追放者食堂へようこそ! 【書籍第三巻、6/25発売!】  作者: 君川優樹
第2部 追放メイドとイニシエの食卓
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第二部 エピローグ 追放メイドとイニシエの食卓



 決戦の夜から、数週間後。


 昼間の王都を、一人のボロボロの男が歩いていた。


 羽織っているコートはズタボロで、身体中に土や泥の汚れが付着している。

 皺の多い顔にも擦り傷や切り傷が多く、まるで悪漢にでも襲われて、身ぐるみを剥がれたばかりとでも言わんばかりの雰囲気だ。


 そんな浮浪者のような姿をした男が、周囲の人間からひそひそ話をされながら歩いていた。


「はぁー……ぐぁあ……ぐぅぅっ……」


 男は辛そうな声で呻きながら、脚を引きずって歩いている。


 その男は街の王城の近くの一軒の喫茶店の外テーブルに辿り着くと、注文もせずにその椅子へとドカリと座り込んだ。


 そのすぐ後ろに座って王都の新聞を広げていた、黒髪をオールバックに撫でつけた小綺麗な身なりの男が、彼に声をかける。


「ロストチャイル……一体どうしたね。ひどい有様じゃあないか」


 男が振り返らずに新聞を読みながらそう言うと、声をかけられたロストチャイルは、力なく笑った。


「ヒース……ここに来れば、会えると思っていたぞ……」

「ここで新聞を読みながら赤茶を飲むのが日課なんだ。こういう日課があるってのは素敵なことだと思わないかい?」

「ヒース……私は世間話がしたいわけじゃあない。死にかけながらここまで帰って来たものでね。わけのわからない辺境の山まで飛ばされて……途中で何度か盗賊にも襲われたよ。皆殺しにしてやったがな」


 ロストチャイルも振り返らずに、椅子からもはや感覚の残っていない脚をだらりと垂らしながらそう言った。

 


「計画は失敗したが……問題ない。次の手は考えてある」

「次の手だって?」


 ヒースは新聞を読みながら笑った。


「そんなものは必要ないよ、ロストチャイル」

「ヒース、君がそう言ってくれるとありがたい。君にも策があるんだな」

「いいや。君はもう終わったんだ。だから、次の手なんて考える必要は無い」

「なんだと?」


 ロストチャイルは振り返ると、ヒースの後ろ姿に向かって言った。


「警察騎士や法官どものことを言っているなら、心配はない。奴らなどいくらでも丸め込めるさ。問題は、あのデニスだ」

「いいや、それも問題ではない。僕の弟だって、君のことなんてもう考えていないだろうさ。すべては完璧に終わったんだからね」

「弟?」


 ロストチャイルがそう聞き返した。

 ヒースはそれには何も答えずに、可笑しそうな声色で話題を変える。


「このエントモリっていう作家のことを知ってるかい? 僕、この作家好きだったんだよなあ。復活してくれて、ファンとして嬉しいかぎりだよ」


 ヒースはそう言うと、新聞の一面をロストチャイルにも見えるように広げた。

 ロストチャイルはその新聞に大々的に書かれている記事を見て、自分の目を疑う。


『文壇から追放された作家、エントモリ劇的復活!』

『ロストチャイル家の闇を暴く暴露本! 闇市場を仕切るフィクサーの真実と、その男と戦った街の全記録! 豊富なインタビューと衝撃の証拠を引っ提げて、あのエントモリが帰ってきた!』

『ロストチャイル、逮捕間近か!?』

『重症の側近は、黙秘を継続中!』

『爆発する世論! まさかあの大貴族が!』

『王政府と王立裁判所、失踪中のロストチャイルの指名手配を国外にも要請!』


「なんだ、これは……」

「してやられたね、ロストチャイル。これは面白い。こういう勝ち方があったなんてね」


 ヒースは新聞を丁寧に畳むと、それをテーブルに置いて、喫茶店のウェイトレスに声をかけた。


「会計をして欲しいんだが、この男にも一杯お茶を出してやってくれないかな。人生で最後に飲む温かいお茶になるかもしれないから、上等なのを頼むよ。冬の牢屋は冷えて仕方ないって聞くからね」

「待て、待て、ヒース」


 ロストチャイルは椅子から立ち上がって、ヒースに縋り付こうとした。

 それをヒースにひらりと躱されると、ロストチャイルはよろけてその場に倒れ込む。


「お前の、例の計画に参加させてくれ。私は実力がある。きっとお前の計画の役に立つぞ。私ならピッタリだろう? それで、お前のところで保護してくれ。少しの間でいい」

「ロストチャイル……」


 ヒースは愉快な物を見るような目つきで、脚に力が入っていない様子のロストチャイルを見下ろした。


「処刑されるときには、黙って首を差し出してやった方が威厳があるぞ。そうすべきだ。僕たちのような人種はな」


 ヒースがそう言ったとき、通りの向こう側から、王都の騎士団が走って来るのが見えた。


「いたぞ! ロストチャイルだ!」

「通報の通りだ! 絶対に捕まえろ!」


 ロストチャイルはそれを見て、苦虫を千匹は噛みつぶしたような表情を浮かべる。


「こ、このぉ……この私を! 捕まえられると思ってるのかぁ! この雑魚どもがぁっ!」


 叫んだロストチャイルが紫色の霧となって一瞬にして拡散すると、通りを歩いていた人々が悲鳴を上げた。


 駆け付けた騎士団がそれを見て立ち止まり、焦った様子で叫ぶ。


「逃がすなよ! 風の魔法を使える奴は追跡しろ!」

「人質を取られるかもしれないぞ! 強制発動型のスキルを持ってる奴はいないのか!」


 紫霧と化したロストチャイルは、そのまま蝙蝠の群れが駆けるように王都の通りを移動していった。


 その霧はデニスと戦っていた時よりもずいぶん無駄に拡散していて、不安定そうで、移動速度も目に見えて落ちている。




 ロストチャイルの不安定な紫霧が通りを拡散して逃げていくのを見届けると、ヒースは何の感慨も無さそうに、まだ辺りが騒々しい通りを歩き始めた。


 ヒースはズボンのポケットに両手を突っ込みながら、勤務先までしばらく歩いていく。


 すると何処からか、か細い声が聞こえてきた。


「……兄さん。兄さん?」


 ヒースはふと、その声が自分を呼んでいることに気付いた。


 見てみると、通りの道端に、薄汚れた少年が座り込んでいた。


 少年の目の前には汚い布が広げられていて、布の上に額縁に入ってすらいない何枚かの絵が置かれている。


「絵を買ってくれないかい、兄さん。お金持ってるんだろ。一枚、買ってくれよ」


 少年はひどく痩せていて、ボロボロの衣服から覗く腕や足はどこも骨ばっていた。

 どこにだっている孤児のようだ。

 そしてその少年には、片足が無かった。


 ヒースは少年に歩み寄ると、その場にしゃがみ込んで、並べられた絵を手に取った。


「君が描いたのかい?」

「そうだよ。でも、誰も買ってくれないんだ。一枚買ってくれよ。安くするよ」

「親はどうした?」

「いない。でも、妹が一人いる。具合が悪くて、いつも寝てるけど」

「どうやって食ってるんだ?」

「前までは、人の物をかっぱらってたんだ。でも、前にヤバい奴から盗んじゃって、脚を切られた。それからは残飯を漁ってる。ねえ、絵を一枚買ってくれよ。上手く描けば、高く売れるって聞いたんだ。妹に、たまにはカビの生えてないパンを食わせてやりたいんだ」


 ヒースはその絵を眺めると、少年に言う。


「僕には絵はわからないけど、良い雰囲気の色だ。これに描かれてる……可愛い女の子は、君の妹かい?」


 ヒースが少年にそう聞くと、少年は嬉しそうに頷いた。


「うん。自信作だよ。きっと、いつか高い値がつくよ」

「ふむ。言われてみれば、だんだん良い絵に思えてきた。君には絵の才能があるのかもしれない。ちょっと、僕に着いて来なよ」

「着いてくって、どこに?」


 少年が聞くと、ヒースはどこかの店主にそっくりな瞳で、にっこりと微笑んだ。


「我々の世界にようこそ。君のような、この世界から排斥された才能たちは大歓迎だ」




 何とか警察騎士たちを撒いたロストチャイルは、人通りの無い裏路地で実体化していた。


 薄汚れた裏路地で、ロストチャイルは疲れ果てたように壁に手を付く。


「ぐぅ……ふぅっ……くっ……この私が、なんてざまだ、くそぉっ……」

「んー、美味ひいー! 大将の料理には敵わないけど、あのお店のサンドイッチ美味しいなー!」

「…………」


 誰もいないと思われた裏路地の、建物の裏口の階段に。


 腰を下ろして幸せそうにサンドイッチを頬張っている、騎士姿の長い金髪の女性がいた。


 その金髪の女性騎士……ヘンリエッタと、ロストチャイルの目がふと合う。


「………………」

「…………あっと……」


 ヘンリエッタは頬張っていたサンドイッチを飲み込むと、わけがわかっていない様子で言い訳を始める。


「あの、いやこれはですね。仕事をサボってたわけじゃなくて、本日二度目のお昼休憩というか、その……あれ?」

「…………」


 ヘンリエッタは懐から似顔絵の描かれた紙を取り出すと、ロストチャイルの顔とその似顔絵を何度か見比べた。


「もしかして……指名手配中の……ロストチャイルさん、ですか?」

「…………」


 ロストチャイルは踵を返すと、何も言わずにヘンリエッタから離れようとした。


「ええと、どうしよう……あのー……一緒に、ちょっと来てくれませんかね? そのー、今大丈夫ですか? これから用事とかあります? ちょっとお話聞くだけなんですけどー」

「黙れ、小娘がぁ!」

「ひ、ひえええっ! ど、どうしようー! えーい! 公務執行妨害! 『大剣演舞』!」


 ヘンリエッタが背中の大剣を抜こうとした瞬間に、ロストチャイルは霧状化して反撃しようとした。


 しかし、体力と魔力の限界だった。


 ロストチャイルが上手く霧状化できずに身体の輪郭を揺らしていると、ヘンリエッタの斬撃スキルが炸裂し、ロストチャイルは路地の向こう側まで吹き飛ばされる。


 そのまま気絶した様子のロストチャイルに駆け寄ったヘンリエッタが、焦った様子で様子を伺う。


「うわーっ! や、やりすぎた! だ、大丈夫ですか! あのー! たぶん指名手配中のロストチャイルさーん!? 人違いだったらそのー! ほんとごめんなさいー! 訴えないでくださいー! 何でもしますからぁーっ!」


 そこに、ロストチャイルを追跡していた騎士団のメンバーが駆け付けてきた。


「ヘンリエッタ! お前がやったのか!?」

「はい!? ええと、そのー! 本官は、ちょっとお話を聞こうと思ったんですがー!」

「でかしたぞ! 大手柄だ! やったな新人!」

「えっ!? そうなんですか!?」

「大物新人騎士の誕生だ! 国際指名手配犯を一人で捕まえやがったぞ!」

「よくやったヘンリエッタ! ボーナス間違いなしだな!」

「うおー! なんか、なんかよくわからないけどやりましたー! やったー!」




 追放者食堂が居を構える街の正門で、ケイティとジーン料理長、それにヘズモッチが馬車に乗り込もうとしていた。


 その馬車を見送りに出ていた町民たちの中から、デニスが声をかける。


「ブラックス・レストランで、もう一回修行し直すんだな?」

「はい。そうします……みなさん、今回は本当に、ご迷惑をおかけしました……」


 馬車に乗り込む前に、ヘズモッチがそう言って頭を下げると、

 見送りに来ていた町民たちの中から、一人の男が歩み出てきて、気恥ずかしそうに声をかける。


「あの……店長の料理、俺っちは本当に好きだったよ。こんな田舎に店を出してくれて、ありがとうな。俺っちお金を貯めて、きっと王都にも食べに行くよ」


 男がそう言うと、ヘズモッチは目尻から涙を一筋煌めかせて、微笑みかけた。


「ええ、ぜひ……ぜひ! お待ちしております!」




「ポチさん、あれからまたすぐに消えちゃいましたねー」


 追放者食堂のカウンターで、ビビアがそう言った。


「あいつにはあいつの矜持があるんだよ」


 カウンターに立っていたデニスは、皿を洗いながらそう言って笑う。


「でも、せっかくだからこの街に居ついちゃえばよかったのに。アトリエちゃんもそう思いません?」


 ビビアがそう聞くと、テーブルに座って珍しく鼻歌を歌っていたアトリエが、『陽』の無表情で返した。



 会いに来てくれたから、きっとまた会える。

 それでいいのだ。



 そうこうしていると、追放者食堂の扉が開かれて数人の顔なじみが現れた。


 その姿を見て、食堂に居た三人の顔が明るくなる。


「やっほーツインテールでーす!」

「ポニーテールだよ!」

「バチェルやでー!」


 三人に連れられてやって来たのは、


「ドウモ! ご無沙汰デス!」


 車椅子に乗って登場した、オリヴィアだった。


「オリヴィア! 良くなったんだな!」

「オカゲサマデ! 何とか活動してイマス!」

「核宝石がキレーに真っ二つに割られたのが幸いだったんやで。粉々にされてたらどうしようもなかったわ」


 車椅子を押していたバチェルが、そう説明した。


「王都中の教授陣をかき集めて修復にあたって、何とかこうとかって感じやな。大変やったんやでー? 内部構造が複雑すぎて脚の制御系が上手く繋がってないんやけど、少しずつ研究を進めていく方針や。解析が進めば、手足を無くした人に付ける義手義足の技術も発展するかもしれんし! 奇械王サマサマやで、ほんまに」

「良かったですね、オリヴィアさん!」

「オリヴィア。おかえり」

「マジで不死身だなてめーよー! 心配かけやがってこの野郎!」


 車椅子に乗ったオリヴィアがそうやってわちゃわちゃと声をかけられていると、その後ろから、法官のセスタピッチが登場した。


「セスタピッチ! 久しぶりだな!」

「やあ、デニスさん。お久しぶりです。ロストチャイルがついに捕まったのを知ってますか?」

「いや、初耳だが……それを伝えるために、わざわざここまで?」

「いいえ、これの付き添いですよ」


 セスタピッチがそう言うと、後ろからポルボとグリーンが何やら荷物を持ってきた。


 荷物が開かれると、そこには以前に食堂で焼失したはずの本が並んでいる。


 煤けていたり変色の度合いが大きい物が大半だが、それでもきちんと本の形を取り戻していた。


「全部とはいきませんが、灰と化した希少本の再生が少しずつ進んできたんです。アトリエ様のご意向で王立図書館に寄贈されることにはなっていますが、その一部を代理で、一度持ってきました」


 セスタピッチはそう言って、アトリエにやさしく微笑んだ。


「なにせ半端な価値の本ではありませんので。移動の際には、私のような法官を一名は付けなさいとのお達しだったんです」

「わざわざありがとう、セスタピッチ。エントモリの本の出版にも協力してくれたんだろう」

「いえいえ。そのおかげで今回のロストチャイルの逮捕は、ちゃっかり私の手柄になった部分が多かったので」


 セスタピッチがそう言うと、車椅子に乗ったオリヴィアが本の方へと寄ってくる。


「デニス様! お仕事デスネ! こちらの本は、このオリヴィアが誠心誠意本棚に納めマショウ!」

「おいおい、車椅子の奴に仕事はさせねえよ」


 デニスがそう言うと、オリヴィアの横に立ったアトリエが、オリヴィアの肩に手を置いた。


「一緒に入れようか。オリヴィア」

「ハイ! お願いイタシマス!」




 アトリエとオリヴィアが本棚に修復された本を納めていると、一冊の本を手に取ったオリヴィアの動きが、ふと止まった。


 アトリエがそれに気づいて覗き込むと、オリヴィアは一冊の本を両手で持って、その表紙をまじまじと眺めている。


『ユヅト写本』


 という本だった。


 ビビアがこれを見ていれば、この本は奇械王ユヅトの遺した全研究を写した貴重な写本で~、魔法の歴史に最も影響力を及ぼした伝説の~、というような解説を自慢気に語りだすところだろうが、


 アトリエは、その本を手に取って固まったオリヴィアに、一言だけ聞いた。


「オリヴィア。その本、好き?」


 アトリエにそう聞かれて、ハッと我に返ったオリヴィアは、


 どう言っていいかわからないような様子で、つぶやく。


「ハイ……とっても。とっても……」


 オリヴィアはそう言って、その一冊の分厚い本を、愛おし気に、嬉しそうに胸に抱きしめた。


「ようやく、会えマシタ……」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 とても、とても昔のこと。


 遠い昔のこと。


 王都の中央通りに面した場所に、一軒の品の良さげな、小さな家が建っていました。


 その家は決して広くはなくて、家人がよほど雑な性格なのか、単に片付け下手なのか、これほど散らかすことができるのかというほど散らかっていました。


 どこを見たって掃除が行き届いておらず、物やら紙やらが散乱しすぎて立つ場所を見つけるのも難しいほど。


 そんな家の中で、一人の青みがかった金髪をした少年が、目に大きなクマを作りながら、叫んでいます。


「ふはははー! やっと出来たぞ! 世界初の完全自立型魔法人形(オートマタ)! こんなものを作れるのは、圧倒的天才的なぼくだけだー!」


 蒼髪の少年はそう叫ぶと、完成したての魔法人形を起動します。


 メイド服を着てお人形さんのように綺麗な顔立ちをした魔法人形は、初めて目を開くと、目の前で興奮気味に立つ少年を眺めました。


「……エエト……ワタシは、ココハ……」

「お前は魔法人形のオリヴィアだ! この圧倒的天才的なぼくの第一の下僕である! ふははは! さあ目覚めよ! 究極の魔法人形よ!」

「エエト……アア! ご主人様デスネ! ご主人様! このオリヴィアは何をシマショウカ!? いやらしいことをすればイイデスカ!?」

「違う! ちがーう! そんな行動規則書き込んだっけ!? 徹夜で作りすぎて覚えてないぞ!? 深夜のテンションで何を書き込んでんだぼくは!?」

「それでは炒飯デスカ!? 炒飯デスネ!? 炒飯をお作りシマショウ!」

「ちゃ、炒飯の優先順位高すぎない!? たしかに好物だけど!」


 そう言いつつも、少年は連日徹夜で寝食も忘れて制作にあたっていたので、お腹が減っていました。


 それで結局は、その魔法人形に炒飯を作ってもらいました。


 少年が初めて誰かと座る食卓に、魔法人形の作った微妙に美味しくなさそうな、ベチャベチャの炒飯が置かれます。


 少年はその炒飯をとりあえずは口に運んで、ため息をつきました。


「はぁ……魔法の歴史に残るであろう究極の魔法人形に最初にやらせることが、炒飯か……これでいいのかなあ?」

「ドウデスカ? ユヅト様! オリヴィアの炒飯は美味しいデスカ?」

「ベチャベチャすぎ……食べるけどさあ……」

「ヤハリ、オリーブオイル一本丸ごとは多かったデショウカ……」

「加減、覚えよう!」

「ハイ! オリヴィアはこれから、たくさん覚えマス! たくさん記憶しマス! たくさんお仕えしマス! オリヴィアをずっとずっと、ずっとお願いいたしマス!」


 その小さな食卓には、そんな楽しげな声が響いていました。



 とても、とても昔の話。


 この話は、とりあえず、


 これでおしまい。



◆◆◆◆◆◆◆◆




第二部 追放メイドとイニシエの食卓


おわり




ユヅト「第二部完走! 読者の皆さま、お疲れさまでしたー!」

オリヴィア「ブックマークと評価ポイントを押していただけると、オリヴィアはとっても嬉シイ!」



追放者食堂へようこそ! 第二部 あとがき



第二部も読んでいただき、ありがとうございます!


あとがきって、書き始めた頃は「早くあとがき書きたいなあ、何書こうかなあ……」と思える一番楽しみな部分だと思うのですが、実際に辿り着いてみると書くことが全然思い浮かばないですね。それくらい満身創痍で第二部も書き切りました。第一部のときもそうでした。


第一部のテーマが「絶対に、ぶっ倒してやる!」みたいな前向きなテーマだったとすれば、第二部のテーマはかなり暗い物になってしまいました。暗すぎない……? どうしてそんなテーマに……? と過去の自分を問い詰めたいです。


書き始めた頃は面白おかしく書けるだろうと思っていたのですが、振り返ってみると滅茶苦茶暗い話が多くなりましたね……猛省しています。そんなテーマ設定したらそりゃそうだろ! という話なのですが。実際に書いてみないとわからないものがありますよね……。


それでも、作者としては書いてよかったな、と思いました。


詳細な大反省会については、活動報告を上げる予定です。


次の第三部の話はすでに決まっていて、第三部については第一部に回帰するような、絶対にぶっ倒してやる! ウオラアアアアッ! っていう勢いを取り戻す予定です。取り戻せればいいなあ、と思っています。


あと、話をもっとコンパクトにできればと思います。第一部が全体として短かったのを反省したのですが、逆に第二部は長すぎました。


ということで、第二部も最後まで読んでいただき、重ねてありがとうございました!


もしよろしければ、下の評価欄から評価ポイントを入れて頂けると、本当に励みになります!


それと、このタイミングでTwitterも始めました。進捗や更新、その他色々を呟く予定。

よければフォローしていただけると嬉しいです! リンクは以下!


https://twitter.com/YKimikawa


それではこれからも引き続き、『追放者食堂へようこそ!』をよろしくお願いいたします!


それではまた! 次は、第三部『追放姫とイツワリの王権(仮題)』のあとがきで!



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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで一気読みさせていただきました。 その間に何度笑わされ、何度泣かされたことか。 すごく沁みる、ハートフルファンタジーでした。 引き続き読み進めて参ります。
[一言] 残酷な描写ありとわかっていましたが私には結構エグかったので、面白かったけどここで一度やめます。更新も途中で終わっているみたいなので。 読みやすいしキャラもよく、続きが気になるので完結したらま…
[良い点] 泣ける、泣けるぜぇ!
感想一覧
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