夭折
問答が続く。
「君は後悔したことはある?」
とうに何問目か数えるのは諦めた。
ぼくは答える。
そりゃあ腐るほどあるさ、誰だって。
「やり直したいって思ったことはある?」
無いは嘘だけど満足してる。
楽しかったし、とぼくは付け加える。
そっか、と意味ありげに声は返答する。
暗転。
「時間だ。最後に一つ。君は誰?」
? ぼくはぼくだ。君こそ誰だ。
「私は誰?」
視界が開ける。そこには管を全身に纏い憔悴しきった少年の姿。
少年は口を開く。
幾度と聞いた声。
「ぼくは誰だ?」
ぼく?
「ぼくは、誰だ?」
君は。
キミハ。
ぼくは――
目が覚めると、ぼくは蝶だった。
もう一度目が覚めると人間だったけれど。
そして、二度と目が覚めることは無かった。