第2話 そして異世界へ
「・・・消されるってどういうことだよ?」
消え入りそうな声で彼女にたずねる。
「ん?文字通り消えるんだよ。人々の記憶から、君がしたこと一切合切すべてが消えるんだよ。」
「!?なんで・・・そんな・・・。」
「そんな?」
ゾクリと、背筋が冷えるような視線に変わる。
「その反応はないんじゃないかなぁ。ソウイチ君?だってこれは君が望んだことの一つでもあるんだからさ。」
俺が・・・望んだ?
「世界から消えたいと願ったのは君じゃあないか。」
いや、違う。それは・・・
「どうでもいいと投げ出したのは君じゃあないか。」
確かにそうだ。でも・・・
「あーー!!!もう!!!」
・・・!?
「めんどくさい。めんどくさいよソウイチ君。この問答が無駄。無駄も無駄だよ。とにかく君は転生するしか選択肢がないのさ」
先刻までの表情とはうってかわって、蔑むような視線で彼女が僕を見る。
「君はもっと足掻くべきだった。藻掻くべきだった。それを怠慢にも放棄した君はこの試練を受けるしかないのさ。」
「俺が一体、何をしたってんだよ!!」
こんなの理不尽だろ。おかしいだろ。なんで消えなきゃならない。俺したことはこんなにも罰を受けなきゃないものなのか?
「したさ。したよ。君は。だからこその転生さ。」
はぁ。と、ため息をついて彼女はこちらに向き直る。
「これ以上押し問答したってしょうがない。本題に入るよ。」
「いや!俺はまだ納得してい「〝黙って〟」・・・」
なんだ?口は動いているのに声が・・・でない。
「〝気をつけ〟からの〝正座〟!」
途端に流れるような動作で気をつけし、正座をする俺。一体どうなってんだ・・・。
「ふふふーん。これはねぇ?神様の特権てやつだよ!あ、なんか仏頂面だとつまんない。〝スマイル〟!」
にこぉ!と素晴らしい営業スマイルになる俺。
この女。ふざけてやがる。
「いい顔になったね!ソウイチ君!では説明をはじめよう!」
もう俺には聞くしか選択肢がないじゃねえかよ。
「転生といってもね。肉体、顔は表面上は今のままだね。中身は異世界仕様にちょこっといじくらせてもらうよ?あ、でもそんなチートみたいな感じにはならないからね?そこらへんの村人Aくらいの強さかなぁ。といっても現代人からしたら中々の肉体能力だよ?ここまで質問があったら言ってねー!」
言おうにも口も何も動かねーよ!
「ふふーん。ないようなので続きいくよぉ!」
こいつ。本当に性格が悪いな。
「転生先はハリス草原。ラピス王国の東の辺り・・・といってもわからないよねぇ。まぁ、自力でそこは頑張って!あ、言語は調整してあるから安心してね。会話は問題ないよ!」
つまり、文字の読み書きは自力で覚えろと。
「魔法とかあるよ!頑張って覚えてね!じゃ、これで説明おわり!」
おい、アバウト過ぎるだろ!?
「あ、ごめんごめん。試練の説明忘れてた。試練は全部で7つ。達成したらその都度ご褒美があるよ!試練の内容、ご褒美はその時のお楽しみ!」
・・・そろそろ、顔の筋肉が吊りそうなのだが。
考えてみて欲しい。全力スマイルをずっと続けたらどうなるかを。
「最初の試練は生存。頑張って生き残るべし!」
「じゃ、ボチボチ転生しちゃおうか!〝解除〟」
「ぷはっ!おい!まだ何も納得してねえぞ!」
「納得も何もないよソウイチ君!君はただ従うのみさ。」
にひっと笑顔を向けてくる。くそ!憎たらしい。
「では!ご武運を祈るよソウイチ君!試練を達成したらまた会えるよ!〝転生〟!」
途端に、俺の足元に10メートル程の魔法陣が広がり瞬く。
「おい!待てよ!まだ俺は何も・・・!」
光が増し、視界全てを覆い飲み込んで行く。
「じゃあね!ソウイチ君!そしてようこそ!」
「監獄世界ネクステラへ。」