第1話 鬼畜な転生
「やぁやぁ!ソウイチ君!この度は転生おめでとう!いや、まだ転生はしてないから転生おめでとうとは言えないな・・・。この場合は転生内定?じゃあ、内定おめでとうだね。うん。内定おめでとう!」
視界が開けて早々、青い瞳と腰の辺りまである透き通るような銀髪に、外国人のようなハッキリとした目鼻立ちをした美少女が、何故か黒の半袖に短パンジャージの自室の女子高生みたいにラフな格好であぐらをかいて浮いていた。
「ねぇねぇ聞いてる?もしかしてあれ?頭の中に直接言葉を送らなきゃ反応してくれない感じ?転生モノの小説だとありがちなパターンだけどそれ希望なのかな?」
「いや、別に希望はしていない・・・。」
「おぉ!やっと反応してくれたよー!もぅ!このまま無視されたらどうしようかと思ったよ!」
「えっと、すみません。今の状況が全く掴めないんですが・・・。」
というか、この空間自体がおかしい。さっきからニコニコと喋り立てる美少女は浮いてるし、辺りを見渡す限り白一色で終わりが見えない。ということはなんだ?俺も浮いてるのか?
「そんなに畏まらくてもいいよー。楽にいこう楽に!なんだっけ無礼者だっけ?それだよそれ!」
無礼講だと思います。口には出さんが。
「まぁ、とにかくソウイチ君は死んだのさ!こっちの都合で記憶いじらせてもらったから実感はないと思うけどね!」
「え!?いじった!?それってどういうことですか?」
「まあまあ!そこは色々あるのよね・・・。記憶が残ってると死んだ時のショックで発狂しちゃったりとかさ。他にも理由はあるけどそんな感じなんですよー。」
たはは。と苦笑いを浮かべる浮遊美少女。
「は、はぁ・・・。」
「もう!硬いよソウイチ君!」
とは言われても、この訳分からん状況でいきなりフランクになれと言われても困る。
「ソウイチ君も大分打ち解けてきたみたいだし、これから何をするか説明するね!」
「いや、そんな打ち解けてないですよ・・・。」
「えー!!私はもうマブダチだと思ってるよー!」
「マブダチとかいつの時代ですか・・・。」
「じゃあ、親友?」
「そうですね。っていや、そういう問題じゃなくて!」
「じゃあどういう問題なの!そうちゃん!」
「いきなりあだ名呼び!?グイグイきますねぇ!?」
「グイグイいくよぉ!イッキ!イッキ!フェニックスー!」
「それはもう色々と違うしアウトだーー!!」
一息につっこんだ俺は、肩で息をしながらジト目で銀髪浮遊美少女を見る。
「はー!おもしろい!ソウイチ君はツッコミ属性持ちだね!」
「そうさせたのは誰だよ・・・」
「まぁまぁ!おかけで敬語も取れたじゃないか!結果どっこいだよ!どっこい!」
・・・まんまと乗せられた。ただ浮いてるだけじゃなさそうだ。
「それをいうならオーライだよ・・・」図星を突かれた俺にはこう答えるだけが精一杯の抵抗だった。
「よし!じゃあ、真面目なお話をしようか!準備はいいかい?そうちゃん!」
「はいはい・・・。おっけーだよ。てか、あだ名まだ引っ張る気かよ・・・。」
「引っ張るよー!気に入ったもん!んと、それで転生のお話だね!」
おう。と短く返答し、意識を集中する。
「そんな難しいお話ではないよ。そうちゃんの元の世界とは違う世界に生まれて貰う訳なんだけど、これは理解できてるかな?」
「まぁ、そうだな。つまりはネット小説によくあるような感じだろう?」
「うん!そんな認識で合ってるね!ちなみに転生してもらう世界は剣と魔法の世界!ありがちだねぇー!」
「ありがちだな・・・。てことはなんだ?チートとかでも貰えるのか?」
「ブッブー!残念!そうちゃんにあるのはペナルティだよ!」
「ペナルティ?」
「そう!ペナルティ!そうちゃんには転生して貰うに当たって3つの制約が課せられるのだ!」
「おい・・・!冗談だろ!?」
「冗談じゃないよ。」
「!?」
さっきまでの笑顔が一転して冷たい表情に変わる。
一瞬で体全てが冷える感覚。
「冗談じゃないのはぁ・・・。そうちゃんが1番わかってるんじゃないかなぁ?」
「・・・どういう?ことですか?」
「気付かない?いや、気付いてないフリかな?」
ニタリ。と、嫌な笑みを浮かべる銀髪美少女。
「あ、ごめんごめん!空気悪くしちゃったねぇ!そうちゃんもリラックス、リラックスー!」
できねぇよ。
「じゃあ!仕切り直して、3つの制約を説明するよ!」
銀髪がピッと指を3本立てる。
「1つ。ソウイチ君の前世での記憶は封印し、私が管理を行う。」
「2つ。ソウイチ君は転生先で生存を続ける場合、私の指令に従わなければならない。」
「3つ。これが1番大事だよ?ちゃんと聞いてね?」
ごくり。と意識もしてないのに俺は唾を飲み込む。
少しの間を空けて、彼女は続けた。
「ソウイチ君が転生先で死んだ場合。」
「ソウイチ君は全てを消される。」
「現世、あの世、その他全ての世界から完全的に。徹底的に。あなたという存在、痕跡、全てが消される。」
俺は、何も答えることが出来なかった。