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基礎魔法の授業

 

  光一とレイラは先程の演習場とは違う教室にきていた。演習場よりかは狭いがそれでも百人は入ることができるくらいの広さがある。この教室には中央に大きな円が描かれているだけであとは何もない。


  教室内は模擬試合の時と顔ぶれが違っていた。レオ達の姿も見えない。おそらく自分で一日に受ける授業を決められるのだろう。


  そんな生徒達の中で一人の少女が光一達の方に歩いてきた。


  「アルヴァさん、レイラさん。 ご機嫌よう」


  「久しぶり、フィオナ」


  黒いロングの巻き髪の少女ーーフィオナーーがその容姿とぴったりのお嬢様口調でアルヴァ達に挨拶をする。白い制服の端を摘み軽く膝を曲げる姿は完全にお嬢様という感じだ。

 

 レイラの反応からして友人であることは間違いない。しかし当然フィオナがどんな人間であり、アルヴァとどのくらい仲が良いのか光一は知らない。

  とりあえず何か言わなくては、と思った光一は「こんにちは」と友人には言わないような挨拶をしてしまった。

  そんな光一にフィオナが口に手を当て驚きを示している。


  (失敗した! 普通友達に「こんにちは」なんてよそよそしい言い方しないだろ!)


  心の中で自分を責める光一であったが、フィオナが驚いたのは別の事であった。


  「アルヴァさんがわたくしに挨拶を返してくれるなんて、初めてのことですわね」


  「あれ、そうなの……?」

 

  フィオナが指摘したのは挨拶の内容ではなく、挨拶をしたことだった。このフィオナの予想外の言葉で、光一はアルヴァのこの世界での立ち位置が何となくわかってきた気がした。


  「先程、アルヴァさんが模擬試合で倒れた、と聞きましたがお怪我はありませんか?」

 

  「治癒魔法をかけてもらったから大丈夫なはずだよ」

 

  フィオナの質問に光一ではなくレイラが答えた。それに対しフィオナは何もつっこまず、頷いてるだけなので、いつもレイラが代わりに応えているのだろうか。確かに光一がこれ以上下手に反応して変に思われるよりかは良いが。

 

  そんな会話をしているうちに、長髪の男が教室に入ってきた。先程演習場の担当をしていたエリオットであった。

  エリオットは軽く周りを見渡し一人で頷いた。おそらくまた欠席がいるかどうかを一瞬で確認したのだろう。

  光一はそんなエリオットの能力に軽く引いていた。


  「それでは、これより基礎魔法の授業を始める。各自三人ずつのペアを組み待機していてくれ」


  エリオットの説明を聞いた生徒は言われた通りにペアを組み始めた。光一はレイナと、先程会話をしたフィオナとペアを組むことになった。

  三分ほどで生徒達はあまりなくペアを組み終えた。それを確認したエリオットが口を開く。


  「今日行うのはペアの三人で基礎魔法を重ね、中級以上の魔法を発動する……つまり複合魔法だ。 属性や種類は自由にして良い。 準備のできたペアから円の中に魔法を発動してくれ」


  生徒たちは作戦会議のようなものを始め辺りは少し騒つき始めた。

 

  魔法の使い方もわからず“基礎”や“複合”などと言われても光一にはさっぱりわからない。

  このままではレイラとフィオナの足を引っ張ってしまうと考えた光一は二人に魔法の事を聞くことにした。


  「えっと、つまりどういうこと?」


  「三人が同じレベルの魔法をほぼ同時に発動させることによって、大きな魔法を生成するということですわ」


  フィオナが丁寧に授業の内容を教えてくれたが、光一は肝心の魔法の使い方を知ることはできなかった。

  どうにかして自然に魔法の使い方を聞き出す方法を模索していた光一であったが、不意に誰かに右手を握られた。


  「な、なに? どど、どうしたの⁉︎」


  「そんなに驚かなくてもいいのに…… ただ補助陣を描くだけだよ」

 

  光一の過剰反応にレイラは溜め息でもつきそうな呆れた顔をして応えた。光一にまた意味のわからない単語が現れる。

  レイラは光一が補助陣という言葉の意味を聞き出す前に握っていた手を彼女の前に引き寄せ、光一の手の甲にチョークのようなもので何かを描き始めた。

  描かれたのは逆三角形の三つの角に小さな丸がついた図形だった。


  「これは?」


  「魔法発動を補助する簡易魔法陣でしょ! もう何回もやってるよね!」


  レイラは光一の質問に大きめの声で説明した。「何を今更」とでも言いたげな様子だ。幸い周りも話し合いをしていたので光一達は目立たずに済んだ。光一は萎縮してしまったが。

  そんな光一の手を見てフィオナは不思議そうな表情を浮かべる。


  「どうしたのフィオナ?」


  そんなフィオナに気づいたレイラが声をかけた。


  「レイラさんの描いた補助陣が以前のものと違うと思いましたの」

 

  「……ええ、そうなの。 これの方がデザインが良いと思って」


  フィオナの質問に多少間が空いた気がしたがレイラは平然と応えた。


  (魔法陣ってデザインの良さとかで決められるもんなのか……)


  自分の手の甲に描かれた補助陣を見つめ、光一は魔法の適当さを知った。

 

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