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異世界召喚?

 

  「アルヴァ!」


  女性の声が聞こえた。今まで聞いたことのない声で聞いたことのない単語を使っている。倒れた自分を見つけてくれたのか。そう思って目を開けようとするがまだ目の前は真っ暗闇だ。

 

  「ちょっとアルヴァ!」


  パチン、という甲高い音の後に右の頰が熱くなるの感じた。どうやら平手打ちをくらったらしい。それを機に今まで暗闇だった世界に光が差し込む。


  「はい! すみません!」


  身体の自由がきくようになり、反射で勢いよく上体を起こす。痛覚が戻りはたかれた頰がじんじんと痛む。視界が徐々に晴れる。

  光一の目の前には彼と同年代くらいの少女が座っていた。髪の毛の色は金。不良、というわけではなくそれが地毛であるとすぐにわかった。瞳の色もライトブルーと日本人ではないのだろう。

  少女は光一の方を向きその白い肌は赤く染まっている。自分がどこにいて、どんな状況なのか全くわかっていない光一は咄嗟に口に出してしまった言葉から何も言えずにいた。そんな光一を見て少女が口を開く。


  「もうとっくに時間すぎてるんだよ! 朝ごはんの準備できてるんだから早く下りてきてね!」


  何やら怒りながら少女は部屋を出て行った。


  「へ……?」


  状況が更にわからなくなり間の抜けた声が出てしまう。周りを見渡す。煉瓦造りの家のようで壁は白い煉瓦でできている。光一はベッドで寝ていたらしい。状況が飲み込めないままとりあえず先程の少女に会いに行くことにした。


  階段を下りリビングらしきところに行くとあの少女が一人で椅子に座っていた。テーブルの上にはハムエッグが二つ用意されてる。彼女は目で早く来いと訴えている。光一はとりあえず彼女の反対側に座った。


  「まったく。アルヴァはもっと早く起きれないの?」


  少女は目覚める前に聞いた単語を再び光一に向けて言った。


  「えっと……アルヴァって? ていうか君は?」


  とりあえず一番疑問になっていたことを聞く。少女は怒りを通り越して呆れてしまっていた。


  「なに? 寝すぎて記憶喪失でもしちゃったの? あなたはアルヴァで私はあなたの双子の姉でしょ」


  まるで赤子に言い聞かせるようにゆっくりと丁寧に少女が応える。もちろん冗談っぽくだが。しかしその言葉で光一は混乱する。


  「え、いや、そうじゃなくて。 俺は兼島光一で、さっき家に帰る途中で倒れて……」


  「……アルヴァ、本当に大丈夫? どんな本読んだらそんな妄想ができちゃうの? 」


  曖昧だが、覚えていたことを話した光一に少女は今度は気味の悪そうな顔で応えた。


  「いや、だから……」


  言葉が続かない光一を見て少女は目の前まで近づいてきた。何をされるのかと身構えてしまう。彼女は光一の額に手を当ててなにやら思案顔でいる。 突然の出来事で光一は顔が熱くなるのを感じた。いきなり美少女に接近されれば仕方のないことであるが。

  彼女の青い瞳に光一の真っ赤な顔が映る。光一がもう少しで如何わしい考えに至るその手前で少女は光一から離れた。


  「熱があるみたい…… 今日は学校、休んだ方がいいかな。 私も夕方には帰るからそれまで寝ててね」


  先ほどとは一転、彼女はとても心配そうにこちらを見ている。光一が興奮して体温が上がったとはまるで思っていない様子だ。光一はとりあえず一人になれると考え「はい」と短く応えた。少女の出した朝食を食べずに、光一は先ほどの部屋に戻る。


  「ここ、どこだよ……」


  光一は部屋にあった窓から外を見る。完全に光一の住んでいる地域にはなかった景色だ。それどころか日本でもないように見える。外には煉瓦造りの家が並んでいる。露店を開いていた男も通りを歩いている親子も日本人には見えない。あまり現実を見たくないという思いで窓から少し顔を離した。


  「え、誰……?」


  窓には薄っすらと顔が映り込む。顔は一つ。この部屋にいるのも光一一人だけ。となると映っているのは当然自分の顔であるはずだが、それは光一の顔ではなかった。金髪に青い瞳。まるで先ほどの少女のような顔だかだ明らかに少年の顔だ。

  光一は自分の顔ではない自分の顔を手で触る。すると窓に見える少年も同じ動きをする。光一は開いた口が塞がらなくなる。それと同時に今まで感じたことのない不安が光一を襲う。


  「これ、どうなってるの…… どうしよう。 えっと……」


  どうしていいかわからない光一は頭に浮かんだ言葉をそのまま口にする。左右を見渡す。特に意味はないが何かをしなくてはという焦燥にかられる。呼吸も荒くなっている。と、そこで現実逃避的な考えが浮かんだ。


  「そうか、これ、夢か。 さっき倒れたんだ。 そのまま寝ちゃったんだ。 きっとそうだ」


  自分に言い聞かせるように言う。光一はこの夢から一刻も早く覚めたいと感じた。何故かは自分ではわかっていないが。

  とりあえず自分の頰を叩いてみる。明らかに痛そうな音がなるが目は覚めない。先ほど少女に叩かれた時よりもじんじんと顔の片方が赤くなる。

 その後も頬を叩くが効果はない。ただ痛みが増すばかりだ。そして光一は最後の手段に出た。


  「寝るか」


  寝て目が覚めればそこは元の世界で元の自分。そう考えたのだった。光一はゆっくりと目を閉じた。余計なことを考えず夢の世界に入っていった。

 

 

今回は異世界に来て迷う光一のすがたしか書かれていませんが、次回かその次から光一の無双劇が始まると思います笑

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