ジジイの洋裁店
「何だアイツ。」
俺は誰に言うわけでもなく、ひとりごちる。すると幌の中の影が蠢き、起き上がった。服部だ。
「お前、いたんかい!」
レオンは、服部に驚きもしない。俺だけですか、びっくりしたのは。
「アリスは、おじいさんのお店の後継者を見つけに行ったでござる。」
え?何してんの、アイツ。
「おじいさんは経営難だと言ってたんだけど、アリスが『経営難ならしゃあねぇな』って言いながら、しつこく食い下がって聞き出したでござる。ご高齢で、馬車の免許もないでござるから、おじいさんは生地の仕入れに行くことが出来ないし、厳しいから技術の後継者も出来ず、このお店を閉めるつもりでいたでござる。でもアリスは、あのお店を気に入ってしまったでござるから、ガインにせびって貯め込んだお金であのお店を買い取って、とりあえず経営者になったでござる。そいで、『後は、仕入れも出来て技術も継げる、親の承諾がいらない若い後継者を探すだけだ。観光もしてこよう。』と言って、行っちゃったでござる。おじいさんが言うには、後継者は、若ければ若いほどいいそうでござるよ。それを聞いたアリスは、『最悪、奴隷を買って来る』と言ってたでござる。」
はあ、と溜め息をつく服部。ああなったアリスは、もう誰にも止められないよな。
「あいつ、自分の目的の為なら、何でもやるよな…。主人公にはなれないタイプだな…。しっかし、若くて、馬車の運転が出来て、しごきに耐えられそうな若者か…。レオンぐらいしか見当たらないよなあ。」
…レオンがいたよなあ。




