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狙いは
シャサが眼をひん剥いて叫ぶ。
「やってみやがれ!」
その勢いのよさは、自らを鼓舞するかの様でもある。
昼間にユウ、そしてレインに力の差を見せつけられたことが、頭をよぎる。
振り切る様に大きく跳躍し、氷塊に飛び乗ったシャサ。
「誰か殺すだあ?回りくどいこと言ってんじゃねえぞ。俺が相手だろうがお面野郎!」
一層の激しさは、警戒の裏返し。
シャサは、亜実の気だるそうな態度を、危険だと判断していた。
キレる時、冷静な態度になる奴はいる。
シャサの脳裏には、常にレインの存在がある。
あの慇懃無礼な若輩者は、しかし、強さだけは認めざるを得ない。
シャサはかつて、レインと一戦交え、そして敗れた。
キレたレインには、手も足も出なかった。
「氷矢」
またも、氷塊に棘が出来る。
尖る棘の切先は。
「狙いは俺か」
ジャービルを向いている。




