話せばわかる
穴倉はほくそ笑む。
その目は依然としてらんらんと輝き、ガインとロイドを見据える。
……様に見えるが、実際は違うものを見ていた。
見ているものは、眼前に浮かんで見えるステータスウィンドウ。
自分のスキル、魔法、称号の項目だ。
「やっぱり。俺は、普通の魔法を修得出来ない」
スキル欄や称号の欄に、様々なものが追加されていた。
そして、魔法の欄には、ひとつだけ。
「称号は、言動や行動で増える。そして、不動心の様に減りもする」
穴倉は、池中瑠璃を頭に思い浮かべた。
スライムの特性を生かし、活路を切り開く彼女を。
「あいつも、何かを失ったりしたのかな」
穴倉はいつからか、感情の揺らぎ、激情を持っていた。
自分ではそれに気が付かなかったが、不動心を失っていたことを瑠璃に指摘され、また、指摘によって激情を認識出来た。
「あいつはすごい。俺もあいつみたいになりたい」
瑠璃の言葉は、まるで魔法だった。
自分を変えてくれた。
穴倉はそう思った。
ならば、だ。
「俺の言葉、行動を、魔法にすればよかったんだ」
穴倉の目がさらに輝く。
「言葉に、魔力を乗せればよかったんだ」
穴倉の体の傷は、癒え始めている。
自己再生を発動したのだ。
角が脈動し、発光を開始する。
「悲しい光景。この世界の生き物は、何の為に生まれて来たんだろう。俺もそうだったけど、こいつらも意味のない存在だ」
金属の激突音が鳴り響き、火花が散る。
ガインとロイドが大きく眼を見開き、自身の振るった大剣と小太刀の先を驚きの表情で見る。
穴倉も目を丸くした。
そこには、割って入った金髪の少女。
少女の瞳は燃える様に真っ赤で、夜目の効く戦人たちには、それは極めて好戦的に見えた。
少女が口を開く。
「待て待てオイ!話せばわかる!」




