弱者の敵は
泥島は本格攻撃開始を心に決めた。
せっかく会えた日本人ではあるけれど、あまりにも傍若無人過ぎると思うし、失礼だとも思った。
何が傍若無人かというと、誰に迷惑をかけても構わないと思っていそうな、戦闘方法が、だ。
ゴウは、土を使った目眩ましを敢行した。
それ自体は別にいい、とは思う。
向こうからしたら、自分は怪しい魔物でしかないのだし、異世界で生き抜くには能力を有効に使い、対峙する相手を排除することに全力を尽くすべきだ、と考える泥島は、むしろ少年たちの思い切りの良さには感心していた。
しかし、人を巻き込む事は泥島の中では許せない事であるし、ましてやここは街中である。
人々の暮らしがあることを考えたら、なるべく迷惑がかからない様にせねばならない、という考えに至らないと人として間違っている、と泥島は考えた。
今回の場合ならば、キーネを巻き込もうとしたことがまずよくないし、地面をならしていた泥島としては、ゴウが道を平坦な状態に戻さなければ、最低限の常識も守れない者として処理する。
そう泥島は心に決めていた。
自分だって、ゴブリンの村で暴れた。
だが、環境の破壊はしていないし、と思う。
攻撃対象はゴブリンであり、池中であって、村ではなかった。
今でいえば、少年たちは、泥島を攻撃すべきであって、それに周りを巻き込むのはダメだ、という気持ちが泥島にはある。
弱者に迷惑をかける強者には、うんざりしているのだ。
「弱い者の敵は、俺の敵だ」
泥島の声は、大きく怒気を孕み始めている。




