表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
711/2233

寒気

「じゃあ、それも踏まえてお仕置きするから」

「……」

泥島の言葉に、タツキたちは沈黙する。

同郷人とわかって、泥島に少しばかり親近感がわいたゴウではあるが、しかし泥島の方は同郷人であることを特に気にもせず、いや、同郷人だからこそ厳しく当たるのかもとゴウは思った。

月に雲がかかる。

月明かりが遮られた。

闇が広がり、その濃さを増して、道の真ん中に佇む泥島を包み込んだ。

タツキが、ゴウから目線を外し、闇を見ると、ゴウもつられた様に、闇に目を向けた。

隆起した地面の先、泥島は闇の中。

そして、その闇の中から、ゴウを見ている。

暗くて、ゴウからは泥島の視線の先がどこを向いているのか、見えはしないが、自分がじっと見られているという確信が、ゴウにはある。

雲の切れ間から月明かりが漏れ、泥島を照らす。

ゴウは、自分の背中がじっとりと汗ばんでいるのをかんじながら、泥島をじっくりと見てみる。

顔は見えないが、目が合った感覚があって、背筋がぞくりと冷えた。

瞬間、ゴウは、後ろに跳んだ。

反射的に、タツキも追随して跳び退く。

ゴウがいた場所の一歩前には、いつの間にか泥島がいて、だらりと降ろした腕を動かさず、俯いて、地面の隆起を見ている。

そして足で隆起を踏み、土をならして、俯いたまま少し首を傾けてゴウを見た。

「何にせよ人殺しは見過ごせないよ」

泥島の目は妖しく光り、秘めた怒りがゴウを刺す。

ゴウは、泥島を怒らせるのは悪手だとかんじたが、だからといってどうにも出来ない。

ただ、小刻みに首を横に振るだけだ。


───泥島は強い。


何故だか、それだけはわかる。

汗が止めどなく流れて、いつの間にか背中のみならず、全身から吹き出していた。

ゴウは、体を冷やすという、汗の効果を思い出す。

「体温だけじゃなくて、まるで闘志まで奪われてくみたいだ」

蒸し暑くて夜風はぬるいのに、ゴウは寒ささえかんじている。

泥島は態度を多少軟化させても、攻撃をやめてはくれないのだろうな、とゴウは思ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ