錬金術って何ですか
この製法で作った魔道具は、もちろん正規の市場に流通することはない。
だが、闇のシンジケートでは、高値で捌ける。
よって、裏社会に流れるのだ。
この闇の売買に手を染めたデイヴは、かなりの財を築きつつある。
しかし、密偵による捜査の手が伸びていることがわかり、逃げる算段を整えていたのだ。
逃げるということは、人間関係ももちろん断つことになる。
だから、この街の住人にはもう、深入りしようとは思わない。
だが、泥島への態度は、好意的だと言えた。
それは、鍛冶師としての本能であり、泥島が明らかにこの街の者ではないこと、そしてその特殊な能力が作用しているのだが、デイヴは無意識だ。
鍛冶師は、土属性の素材を多く使う。
お陰で、見たことのない土属性の魔物に、興味をそそられているのである。
泥島への興味で思考が埋め尽くされ、錬金術師という単語が口をついて出たのだろうが、デイヴとしては、気にされることを警戒した。
鍛冶師が錬金術師云々と、言葉に出すこと自体が、不正な製法に関わっていると思われかねない。
ミモザは聞き流した様だし、泥島はゴーレムだ。
気にするまでもなかったか、とデイヴが安堵の息を漏らすと同時に、泥島が無垢な質問をした。
「錬金術師って何ですか?」
デイヴは生唾を飲んだ。
ミモザは気にした様子もなく、泥島に錬金術師の説明を始める。
「錬金術師はその名の通り、錬金、つまり金を生み出すという思想で作られた術よ。あらゆる金属を作り出して、実際に金を作れる術者もいたという話があるけど、ねえ?」
ミモザは、肩をすくめておどけてみせた。
その顔には、胡散臭い話だわ、と書いてある。
泥島は少々残念そうな顔と声で質問を重ねる。
「え、作れないんですか?」
「物に魔法を込める術が一般的よ。それこそゴーレムを作り出したり」
「え~!俺にとって、一番いけ好かないじゃないですか~」
口を尖らせる泥島に、ミモザも、そしてデイヴも注目し、無言になった。




