652/2233
神殿へ飛べ
穴を掘る時は、決まって何かから身を隠す時だった。
撤退を選択した時、心が前に進むことはない。
その時の、暗く、先の見えない気持ちを思い起こさせるのが、暗闇であり穴だった。
「もぐらなのに、光が恋しいなんて。ふふふ、はははは」
乾いた笑いが、空しく響く。
何者の存在もない空間で、何に安堵するというのだろう。
「そうだ、神殿」
穴倉が後ろに向き直ると、遥か遠くに山。
そしてその山頂付近に、神殿がある。
誰かいるかもしれない。
「飛べば、そんなにかからない」
穴倉は触手を頭上で振り回し、山の神殿へと向かって飛び立った。




