眠るババア
壁の内側で、セオドールとダーハムは落ち合った。
ネネクレアのリュックから糧食や干し肉などを取り出し、貪り食いながら、街の中へと歩を進めるダーハム。
そして手に持った食糧を横に放ると、瞬く間に欠けてゆく。
そこには、隠身で消えたままのセオドールがいて、受け取った食糧を食っているのだ。
ダーハムは子守唄で周囲の人間を眠らせながら。
セオドールは隠身で姿を隠したまま。
二人は、真っ直ぐ歩を進める。
年端も行かぬ少年少女をおぶっている、異様ななりの冒険者など、本来ならば通報されるに決まっている。
だからこそダーハムは、子守唄による無差別睡眠で騒ぎを防ぐのだが、街中を眠りが襲う異様な光景は、別の騒ぎを発生させる要因となり、結果的には蕀が危険視されることになるのだが、ダーハムにそこまで思考を巡らせる頭はない。
今日も今日とてそれに変わりはないが、しかし、別のことについて考えているダーハムは、珍しく鋭い目つきだ。
「さっきの子たち、どう思うー?セオドール」
「弱過ぎだ。あれは」
「エナジードレインだよねー」
「だろーな」
隠身が解け、セオドールが姿を現す。
真っ直ぐ前だけを見据えて突き進むダーハムは、セオドールの方を向くことなく、目を細めた。
目的地は近い。
「あの子たち、ザハークだよねー?そういう修行かもー」
「LV下げるのがか?」
「うん。エナジードレインは強さは吸い取る。けど、スキルはそのままだって聞くよ。…あの子たち、殺しに戻ろっか。何か嫌な予感がする」
「…いや、やめとこーぜ。深追いしたら、ろくなことにならねー。それよりも、エナジードレインなんかやれる魔物がいることが問題だろーが」
「報告に行かなきゃダメかー」
同意の頷き、そして無言。
そのまま二人は、ある店の前まで来た。
隠身を解き、セオドールが戸を開けてやる。
子守唄をやめたダーハムが先に中に入り、続いてセオドールも中へと入る。
「ババア久し振り!ババア…?」
「何だよババア、寝てやがるのかよ。起こせダーハム」
「不用心だなー!ババア、ババア!寝ちゃダメだってばー!」
子守唄によって眠らされた老婆は、キーネ・ムーラン。
蕀の二人が入ったのは、ムーラン商会であった。




