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メの索敵
夕陽が沈む。
森が次第に赤く染まり、吸血鬼たちの眼の色が、より鮮やかに燃える。
イゴール、シャノン、フォンテス、マシアス。
彼ら、赤い眼の吸血鬼たちが見るは、木々によって作られた道の突き当たり。
そこに潜むは、老ゴブリン、ゴグ・メだ。
干からびた様な顔に刻まれた深い皺、そして血走り、窪んだ眼は、苦々しげな様にも、笑んでいる様にも見える。
大きく裂けた口は、今は真一文字に結ばれていて、メの神経の尖り、緊張感を物語っている。
このメの緊張感の元は、無論、フォンテスたちの存在が理由だ。
耳をすませて動かないメは、相手が複数人だと見抜いている。
伊達に森で暮らしていたわけではない。
話し声の気配。
揃わない足音。
高い声が混じっていた話し声の気配からは、男女混成の集団だとわかる。
足音は、接地の間隔、性質が様々ある為、異なる体格、異なる靴の複数人が歩いているのがわかるし、その中でも女は、どうやらヒールの高い靴を履いている。
ということは、普段は飛空を使って移動している可能性が高い。




