即身成仏
瑠璃とギルバーティも同時に動いた。
瑠璃が指鉄砲をギルバーティに向け、人指し指の先から水弾、そして握り拳を勢いよく開いて飛沫を放った。
水散弾である。
水弾を避けたギルバーティではあったが、無数の水の弾丸が広範囲に拡がり、飛んで来る水散弾は避けられない。
「上位盾」
魔法の盾を前面に出現させ、全弾弾くギルバーティだが、いつの間にかエプロンドレスから抜け出ていた瑠璃は、全身が虹色のスライム体となっており、既にギルバーティのサイドを取っている。
「スライムパンチ!」
瑠璃の体の前面から、無数の腕が伸びて拳を繰り出す。
ギルバーティは身構え、顔の前に腕をかざした。
瑠璃が伸ばした無数の拳の指が開き、ギルバーティの四肢を掴む。
「何て力だぜ!振りほどけないぜ」
ギルバーティは歯噛みする。
思った以上に瑠璃は強い、と。
瑠璃の表情が険しくなる。
思った以上にギルバーティは弱いが、油断はしない、と。
瑠璃の伸ばした無数の腕が、勢いよく戻る。
そして同時に、無数の腕をかき分ける様にして、一本だけ新たに作られた腕が、ギルバーティへ向かって伸びる。
その先端の拳は、人間の拳大の大きさだが、倍々で大きくなり、瞬く間にメートル級の拳となって、ギルバーティの顔面から腹にかけて炸裂した。
「ぐ……お……」
「とどめよ」
炸裂した拳が縦に割れ、腕が二またに分かれる。
割れた拳は二またの腕の先端で、二対の巨大な掌を形作る。
そして左右に展開し、ギルバーティの全身大の大きさとなる。
「即身成仏、スライムクラップ!」
掌ふたつでギルバーティを挟み叩く。
合わせた掌を離すと、圧し潰されたギルバーティが、左掌に張り付いた。
掌はスルスルと縮み、人間の掌大の大きさになり、張り付いていたギルバーティの体が離れた。
輝く目の光が消え、前のめりに倒れ込むギルバーティ。
「私はあの日を乗り越えたわ」
瑠璃がギルバーティを倒した。
伸ばした腕が巻き尺の様に戻り、瑠璃は虹色の人型から、不定形となって、エプロンドレスに飛び込んで潜り込み、人間の形、そして色彩となる。
右足を伸ばし、左足を少し曲げて地面に座り込む瑠璃は、左腕で膝を抱える。
そして、左側に倒れているギルバーティを、右手の人指し指でさす。
「ギルバーティ、叩き潰してやったわよ」
ギルバーティが倒れると同時に、クマガイが伸ばした爪が、アプリコットの心臓を貫いていた。
アプリコットは、自身の髪を一束切り、地に落とした。
そして、絶命した。
すると、瑠璃が倒したギルバーティが、アプリコットの胸に吸い込まれた。




