神聖焔に笑う
地獄の様な灼熱は、痛みと苦しみをSARUに与えた。
カプリスの姿が見えない闇の中での全身炎上は、SARUに、かつての仲間の顔を思い浮かべさせ、裏切りの報いを受けている様な気にさせた。
数百年経って尚、自分が裏切った仲間の幻影にこだわっている己の心と向き合うことは、SARUにとって空しくもあり、悲しくもあるが、カプリスを仲間にダブらせて、一撃食らった気になりたいSARUの心は、にわかに満たされたのである。
続きカプリスの炎の拳が迫るが、SARUからは見えない。
拳が顔面にめり込み、細胞が、骨が、焼ける、焦げる、溶ける音がSARUには聞こえた。
頭を打ち抜かれたかの様な鋭い衝撃と共に痛みが走り、殴り飛ばされるSARU。
一瞬遅れて、灼熱とは別の熱さがSARUの中に刻まれる。
顔が熱くなり、鈍い痛みが後から広がった。
二つの痛みは、灼熱と渾然一体となる。
そして次第にSARUの体内から、神聖の光が顕現した。
神聖光は炎に混ざり、炎は白熱の柱となって天に昇る。
「神聖焔の拳」
カプリスがポツリと呟いた。
業火による痛みと苦しみ、神聖光の浄化がSARUを襲う。
致命的な一撃だ。
体の自由が利かなくなり、四肢の力が抜けてゆく。
しかし、炎に包まれたまま、SARUは高笑いに至った。




