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レインボースライム、明日へ

ウサギはこちらを横目でチラッと見た。しかし私の存在なぞ気にする素振りもない。横柄な態度に腹も立つが、ウサギは強い。服部を押し潰し、泥島をものともせず、高木を粉砕し、私を爆散させた。薄れ行く意識の中、私は誓った。もう二度と、ウサギには負けない、と。


生き返った私が、あの強いウサギと次に会った時、奴は、美味しいお肉になっていた。奴との決着は永遠につかない。だが、こいつを倒すことで、代償行為は成る。私は、このウサギを倒して前に進む。もう二度と、ウサギには負けない。


と、ウサギはピョンピョンと跳ねながら逃げ出した。私は球体となり、転がって素早く回り込む。そしてごく薄く地面に伸び、奴の足を掴んだ。圧縮によって弾力性を持った私の体組織は、奴の重量も筋力もものともせず、足を封じることに成功した。そして水鉄砲を二発発射し、一発は目付近に、もう一発は首の辺りに命中させ、顔に取り付いて、鼻と口を塞ぐ。そしてスライムパンチで腹部を殴る。あの日そのままの私たちの理想の形を、獲得した戦闘用スキルを用いつつ、私ひとりでやったのだ。




「…武士の情けだ。行け。」

解放したウサギが、跳ねて逃げて行く。

あのまま殺すことは出来た。だが、こいつは私たちを倒した、あのウサギではない。殺す必要はない、と私は思った。

私は掌の形を作り、ウサギの逃げた方向に向かって敬礼した。逃げたウサギに、あの日のウサギを重ねて。放った水が落ちた傍らに、小さな虹がかかっていた。


あの日、ウサギがくれた敗北が、今日の私を作ってくれた。

そして、今日の私が、明日の私を作ってくれるだろう。

私は、あの日を乗り越えた。


頬を撫でる風が気持ちいい。私の頬がどこにあるのか、わからないが。

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