ロイドとガイン
「新手発見!逃がさぬコブシィ!」
「何奴」
SARUは、凄まじいスピードで駆け抜けようとするロイドを捉えた。
ロイドは手甲でSARUの拳を受け、後方へ跳ねて距離を取る。
その姿を見たSARUが両手で頭を抱えながら悶える。
「ロイドプリンス!?俺マジ困惑!」
「ロイド王子!?ルレット・ジョルカル・ランダルムです!助太刀して下さい!相手は魔拳のSARU!」
カプリスが喜色を称えた顔で叫ぶ。
ロイドも、カプリスそしてガインを視認した。
「ルレット殿!?ガインまで!何!?SARUだと!?」
神殿最強の師弟が、伝説の男と戦闘というとんでもない場に遭遇するとは。
ロイドは一瞬戸惑う。
ルレット・ジョルカル・ランダルムは得体が知れない魔女だ。
王も、兄たちも、警戒していた超危険人物だ。
手を貸すべきではない。
「ロイド王子!お下がりを!己の後ろへ!」
しかし、ガインの存在が、ロイドの立ち位置を決めた。
この男の中の男、聖騎士ガインが、悪のはずがない。
いや、たとえ悪でも構わない。
ロイドは、何があろうとガインと共に戦う。
そう心に決めていたのだ。
ロイドはかつて、城に招かれたガインを、悪だ化け物だとなじり殴って、さらには叩き斬ろうとした。
子供には、化け物が英雄などと信じられなかったのだ。




