収納空間(アイテムボックス)
素材の換金を終えた泥島は、困り果てていた。
目の前には、大量の貨幣と、鱗を剥がれた翼竜の肉。
「これを、どこに仕舞えと?」
そうなのだ。
泥島典保は、泥だんごである。
彼は女神カプリスによって、泥だんごに転生させられた、悲劇の男であった。
「泥兵変があるから、ちょっとは手荷物として持てますけどお…」
そうなのだ。
普段の泥島は泥だんご。
手足はなく、物を持つことなど、夢のまた夢であった。
「あの~、すいませんね~。エコバッグとか持って来てないんでですね~、袋とかありませんかね~」
「ドロシマ、収納空間を持っていないの?」
そうなのだ。
泥島には、体に埋め込まれている聖金貨と魔石以外、何もない。
ジアナが驚きの声をあげ、収納空間を開く。
すると手元に、ぽっかりと穴が開いた。
「何ですかそれ~?わ~アイテムが出て来た~、なるほど~」
「高い物は高いけど。まあ聖金貨二枚あれば、いい収納空間が買えますよ」
「それ、どんなもんなんですかね~?」
「大型の竜まるごと百匹は入ります」
「そうなんですか~?じゃあ、それでいいかな~。でも俺、そんなに金あるんですかね~?」
「今回の翼竜の報酬は、聖金貨三枚程はあります。ドロシマ、買えますよ」
「じゃあ、お願いしていいですか~?」
泥島は、充足感を得ていた。
「自分で稼いだ金で、初めて買い物しましたよ~」
貨幣と肉を、ボックスの中に放り込む。
「アリスみたいに、人から金もらうダメ男じゃないんでね~、俺は~」
アリスに埋め込まれた聖金貨などは、もらったうちに入れていない様である。




