亜実の戦闘
渓谷を行く少年が一人。
少年は黒髪に黒目。
華奢な体を真っ黒なローブに包み、背には何も入っていない道具袋を背負っている。
正体は、アダム・グラムに接続している高木亜実である。
目指すはガムドムルァの森であるが、アダムの魔力が尽きていて、歩いているのだ。
「ん?ああ、熊ですね、うふふ」
亜実の前には巨大な熊。
身の丈は三メートル程もあるだろう。
しかし、亜実は些かも気持ちを波立たせず、冷静に対峙する。
一瞬の沈黙。
アダムの口が半開きになると、口から無数の細い根が高速で伸び、熊の目、口、鼻、耳から中へと侵入。
そして一瞬にして熊の動きが止まった。
アダムと熊が、根で繋がっている異様な状態で、アダムは何ごともないかの様に歩き、いつの間にか握っている剣で、熊の心臓を刺した。
数瞬後、熊が仰向けに倒れると、根が抜かれ、アダムの中に瞬時に戻った。
「LVが上がりましたね、うふふ。今日はここで記念のキャンプってのもいいかも知れません。食料も確保出来ましたし」
熊の体に背を向け、広めの場所で、背負っている道具袋を空中に放り投げると、袋は一瞬大きく広がり、適度に縮んで地面に刺さってテントになった。
「さあ、熊の解体と行きましょう」
亜実はアダムの体を操り、再び熊の体の前に立たせ、剣を構えさせた。




