ジアナと泥島
「誰に言葉を教わったんです?」
「両親ですかね~。あ、俺前世の記憶が残ってて、前世の両親のお陰なんですけどね~」
「何故レブナントに?」
「俺、魔人の友だちがいるんですけど、これがクズでね~。自分がレブナントになったからって、俺を巻き添えに。あいついつか絶対泣かせたい」
「何故主がいないのですか?」
「俺実はゴーレムじゃないんです。これは泥兵変ってやつで今はこう、勇者王的なロボ的な、男のロマンの合体変形、デラックス泥島保典ってかんじになってますけど、実際は、これっくらいの、おべんと箱に、ね?チョイと詰められちゃう様な小さめサイズの泥だんごの妖怪なんです」
「飛空魔法を使える妖怪ということですか?」
「いやレブナントになったら使える様になりました。あと飛空魔法って何ですか?空飛ぶ魔法は浮遊魔法ですよね?」
「浮遊魔法…?で、では何故翼竜を換金出来ると知っていたのですか?」
「え?ギルドで素材集めとか薬草採集の仕事とかあるじゃないですか~?子供でも知ってますよ~」
「た、確かに…」
この国では、高位のゾンビであるレブナントは、邪悪の代名詞だ。
生前の知能を悪事に使う魔物だし、魔法によって存在しておきながら、魔法を使うレブナントは、魔法の上に立つという人の地位を脅かす、許されざる存在だ。
悪名高いザハーク教団の司祭の中にも、レブナントは複数存在すると言われており、どれだけ迫害されてもザハーク教団が滅びないのは、レブナントが不死身だからだという。
だが何か…そんな雰囲気ではない。
「レブナントは不死身なんですよね?」
「そうなんですか?でも俺、多分このemethって文字の最初のe消したら死にますよ。スライムの友だちに消されて、死にかけましたもん。ゴーレムボディ捨ててギリ脱出したけど」
自分の弱点も言ってしまうのかこいつは?
ジアナは苦悩の真っ只中だが、有用な情報をまだまだ聞き出せそうだと思った。
しかし。
「ご親切にありがとうございました。じゃあ」
もう、ギルドに着いてしまった。
「ま、待って!」
「え、何ですか」
「ま、まだ話が!…私はジアナです!あなたは!?」
「泥島です。泥島保典」
「ああ、ドロシマヤスノリは名前だったんですね!ではドロシマ!この後の予定は!?食事でもしませんか!?」
泥島の動きが止まった。
そして、押し黙った。




