泥島、翼竜を倒す
「土弾…オェッ」
口から土の弾が出た。
土弾は翼竜の鱗に弾かれ、泥島は虚ろな目になる。
「予想通り過ぎて笑えないですよ。泥兵変」
泥島の体から、黒い瘴気が漏れた。
それは最初だけゆっくりと。
そして泥島を中心として、爆散する様に放出された。
泥島から高速で土が湧き出して、泥兵の体に変わって行く。
「ああ…空中だとこうなるの」
ゴーレム化した泥島は、二メートル近くはあるであろうが、胸部が流線型のフォルムだった。
翼竜が突撃して来る。
「空気読んで下さいよ。俺今変身中でしょ」
泥島が真正面から翼竜をぶん殴る。
「ギャアアアアアア」
翼竜は口を拳で叩き潰され、痛みに体をくねらせた。
火球を吐き出そうとするも、翼竜の顎は開かず、その火は掻き消えた。
「何か可哀想だなあ。ごめんなさい」
泥島は翼竜の首を両手で絞めた。
翼竜の体温が伝わってきて、泥島は呻いた。
酸素を取り込めない翼竜の体から、力が抜ける。
生が死へと向かう瞬間をかんじる。
それが自分の手によって作られているのが、泥島にはたまらなく嫌だった。
「素手の戦闘ってエグいよなあ。これ、キツいよなあ」
泥島は肩を落とした。
しかし、これをしないといけないと思った。
命に向き合い、生と死を心に刻み、人の感覚を持ち続けないといけないと思った。




