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十年経っても、己は己
「…あれからもう、十年も経つのだな。」
ガインは、森を歩く。デシネを倒すことは出来なかった。エイミーと夫を滅ぼし、他のアンデッドたちも倒して回った。彼らを浄化することは出来た。
夜中に起き、窓からずっと戦いを見ていたらしいユウは、ダンジョンを解除すると、残念がって泣いてぐずった。その後、いつもの様に、元気にモリモリ食べていた。
…あの子ももう、十五歳だ。己のことは、覚えてくれているだろうか?もし、今会ったら、あの頃の様に懐いてくれるだろうか?それとも、ゴブリンを忌み嫌う様になっているのだろうか?
「族長、何カ?」
すぐ後ろを歩くゴブリン・アーチャーが訊ねた。ガインは振り向き、目を閉じて、ふっと笑った。
「族長、化物討伐…上手く行きますカネ?」
自嘲気味に微笑んだガインは目を開け、言った。
「倒すとも。」
あの時も、肝心なところで剣を退いた。ガインは、若き日の自分の苛烈さと甘さを青いと思うが、今もそう変わらない、とも思った。
「十年経っても、己は己か。」
苛烈で甘く、青いままの自分へ、また笑った。




