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混沌の疑惑

かの超人勇者ユウですら、持つ属性は五つだという。

なのにこの少女、ネネクレアは六つだ。

ジアナは、タツキとゴウを呼ぼうとする。

Aランクパーティーの地下牢に相応しい娘だ、とジアナは思った。

だが、ネネクレアは、その後ろにいた男に、ひょいと後ろ襟を掴まれ、隅のテーブルに連れて行かれそうだ。


「待ちなさい〝混沌〟のエタース!」


ジアナはカウンターを飛び越え、どこから取り出したのか、脇差しを手に持っている。

鞘から抜き、構えたジアナから発せられる殺気は、先程までの受付嬢ジアナではなく、冒険者パーティー〝十葉〟水刃のジアナのそれであった。


エタースと呼ばれた男は振り返りもしない。

奥のテーブルについていた、片側だけ長髪の、アシンメトリーの髪型の男が立ち上がり、エタースの傍らに立つ。

細身で、エタースよりさらに幾分長身で、手足が長いその男は、赤いレザーの様な材質の上下に身を包んでいる。

作りは王族服の様で、金の豪奢な刺繍が、毒々しい紋様を形成している。


「レッドニンジャ、シャサか…!」


シャサと呼ばれたその男は、白目に黒い瞳ではなく黒目に白い瞳。

緩いパーマがかった髪の一部が、片目に簾の様にかかり、シャサは首を傾けて、目にかかるその髪を流した。


顎を上げると目を細め、歯を剥き出しにして嗤う。

その歯は真っ黒に塗られていて、幾多の修羅場を潜り抜けてきたジアナでも怖気が走った。


「〝混沌〟がその子に、何の用があるというの!」

「何がだよ?水刃のジアナ」


シャサは手をぶらぶらさせ、体を揺らしながら、ジアナと対峙する。

その幽鬼の様な動きはまるで生をかんじさせない。


「その子を離して。こっちに渡しなさい」


エタースに後ろ襟を掴まれているネネクレアは、まるで無垢な子猫の様で、きょとんとしている。

エタースが意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「六芒星全持ちなんて稀少(レア)は俺たちがもらう。ただそれだけよお」

「そんなこと許せはしないわ!離しなさい!」


ジアナが態度を硬化させるのには、わけがある。

〝混沌〟のメンバーの一部は、人身売買に手を染めている疑惑があるからだ。

そして疑惑の筆頭がこのエタースとシャサであった。


「どうしよっかなァ~」


シャサが、悪戯っぽく破顔する。

そして、目が殺意の鈍い光を灯し、見開かれた。


「答えはこうだ!イヤッハァ!」


シャサが駆け、その拳が、ジアナの顔面に迫った。

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