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夜に、歓喜の雄叫びを

「この手口、奴か…?」

デシネはひとりごちた。呪い対策といい、屋敷のダンジョン化といい、相手は手慣れている。そして、一体、また一体と、骸骨(スケルトン)やゾンビが倒されているのを感じ、つい呟いてしまっていた。

神殿騎士(テンプラー)ですわ。」

徐々に回復し、ガインに瞬断された四肢が生え、剣を突き立てられた傷跡も治り始め、立ち上がろうとしていたエイミーが答えた。

「そのままでいいですよ、楽な体勢で。」

デシネは、エイミーを制する。動かない方が回復が早まるからだ。気遣いではない。

「テンプラー?では、奴ではないのか?」

しかし、奴に似た何かを感じるのも確かだ。油断してはならない。

と、ぞわりと総毛立つ異様な気配を感じた。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」

エイミーが狂気の表情を浮かべていた。初めて自我を失い始めている様だ。魂が黒く穢れきって、さらに黒さを深めていくのが見える。

「殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セー!」

魂を共有している後ろの(スケルトン)は、とっくに自我を失っていた。デシネが神殿前で遺骨を受け取った時、既に夫の方は、簡易的にではあるが清められていた。その為、アンデッド化しても今の今まで自我を失うことがなかったのだろう。簡易的な浄化ですら、これほどの効果を発揮するなど、敵は、並の神力ではない。

そしてエイミーも、並の闇力ではない。ここまで濃く穢れるまで自我が揺らがないとは、暗黒耐性が強過ぎるし、無限に穢れる魂を持つなど、闇が深過ぎる。余程血塗られた人生を送って来たのだろうか。穢れの永久機関。とんだ拾いものだ。今夜中に邪神になれるとは思ったが、それ以上のものも望めるかもしれない。デシネの脳裏に、妻の笑顔が鮮やかに浮かんだ。

「一旦、魂を喰うか。」

デシネは、エイミーたちの魂の穢れを喰らった。こんなにも穢れが濃い魂は喰ったことがない。これは、膨大な経験値になるだろう。穢れを全て吸い尽くし、魂が透き通ったエイミーと夫が正気に戻るのを見る。妻が蘇れば、こうして永遠に穢れを取り除いてやればいい。楽しみだ、その時はきっと遠くない、早ければ本当に今夜かもしれない。


と、心躍るデシネの頭の中に声が響く。


『ぱらぱぱっぱぱー♪デシネはLV13から一気にLV20に上がった!邪神に進化出来る様になった!進化する邪神を選んでねっ☆』


デシネは、歓喜の雄叫びをあげた。

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