ふたりの違い
少女が歩いている。
「ところどころ跳ね返った長い金髪に、意志の強そうな赤い双眸。
さくら色の唇は可憐で、可愛らしいピンク色のエプロンドレスよりも華やかだ。
肌は驚くほど白く、時折見せる流し目は妖艶。
男女問わず魅了されるその美貌は、ブレブロの女神とさえ呼ばれ、誰もが振り返り、称賛する。」
アリスだ。
「お前ね、自分で言ってて悲しくならないの?別にいいけどさ~」
泥島は、ジト目でアリスを見る。
いつもながら、ナルシスト全開のアリス。
いつもながら、軽くイラッとする泥島。
エディは、無言でふたりを交互に見て、ふらふらとした足取りで追いかける。
「くそ泥ネガティブ闇属性だんご、お前もやってみたらいいわ。自分を好きになってあげてこそ、女の子は本当の輝きを得るって話だわ。俺もエディもお前も、これからは女子らしく可愛く行くべきだと思うわ。あんな闇悪夢とかひくわー。いやいやまじで」
エディは、目を輝かせながら、小刻みに頷いている。
その様子も一瞥した泥島は、アリスの方も一瞬見て問う。
期待の表情は笑顔混じりだ。
「色々突っ込みたいところは満載なんですけど、とりあえず何で俺も女の子ってことにされてるの?何、俺も意外と可愛かったりするの?」
「そんなワケねぇだろ妖怪。お前は単なるヲチ担当だわ」
「嘘でしょ!?普通に傷つくんですけど」
天真爛漫に笑うアリスを見ていると、まるでこの世界に来る前の、平和な日常にいるかの様に思わせられる、と泥島は思った。
だが、アリスは空を睨むと、全身から発散される暴君さながらの覇気を急に撒き散らした。
「泥公、急げ!」
アリスが突然駆け出した。
エディも即座に反応して、ぴったり付いて走っている。
アリスが泥島だけに声をかけたのは、エディにはその必要がないと踏んだからだ。
そして。
「俺、とことんナメられてますよね~」
泥島の自己評価は、アリスと違い、自虐的だ。




