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神殿騎士のジレンマ

馬車に揺られる三人。エイミー、ユウ、ガインである。エイミーが街に出るというので、ガインは従者として帯同することになった。

「今日は一体どんな用事で街に?」

「夫の遺骨を神殿に取りに行きます。」

「っ、そうですか。」

聞いてはいけなかったかな、とガインは一瞬後悔する。しばしの沈黙の後、エイミーが満面の笑みで言う。

「お気になさらないで下さい。私は次に向かって進んでいますから。」

ガインは一抹の違和感をかんじるが、何も言わない、何も言えない。またも沈黙が始まる。

「おやつ。」

ユウが沈黙を切り裂く様に呟いた。ガインは生産魔法で糧食を作り出し、食べさせながら訊く。

「やはり高額だからですか?」

さらに、言葉を続ける。

「神殿で、ご主人の魂を浄化しないのは。」

ガインは神殿騎士だった。訪問者の治癒や魂の浄化は主に神官である師の仕事だが、冠婚葬祭は大金が入る。だから、神官である師はそちらを優先せねばならなかった。神殿の規定でそう決められていた。すると、神殿騎士であるガインがその他の通常業務を一時的に引き継ぐのが常だった。大金がかかる。だから料金が払えそうにない者は、代替手段として精霊術士に依頼する。安いからだ。しかし精霊術士はピンキリで、浄化術を使えない詐欺まがいの者も多い。

「よければ、(おれ)がやりますが。」

「お気遣いありがとうございます、ガインさん。でも、必要ありません。」

微笑みながらエイミーが言う。きっと大丈夫だろう、己の考え過ぎだ。ガインは、そう自分に言い聞かせた。

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