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人間への転生
闇夜の中。
焚き火で男の顔が照らされる。
ガッチリとした体格。
着ているものは、リクルートスーツ。
そして、目にかかっているのは、黒縁メガネ。
男は、突然姿が変わった自分に戸惑っていた。
人間の手がある。
足がある。
これは、喜ばしいことではある。
男は、まとまらない思考で、自分のこれまでを思い出してみようと、目を閉じる。
この世界に転生し、新しい自分になった。
胸踊る冒険など、どこにもなかった。
新しい自分は、無力だった。
殺され、生き返ると、以前とは少し、だが、大きく違う自分になっていた。
それに慣れようと思った。
だが、その矢先にこの変化だ。
自分が、明らかに弱くなっているのを感じる。
人間への転生。
それは男にとって、今となっては、望まないものであった。




