水が穿つもの
「ならやってみせろ」
「やってやるわよ」
ルリは、地に潜ませた全身から水を吹き上げる。
そこには、ルリの体を小さくした分体が無数にある。
ビー玉大の大きさのそれは、水を噴射して空中に浮遊している。
「行け」
ルリの声と共に穴倉に向けて突撃する分体。
穴倉は、事も無げに分体の突撃をかわしてゆく。
「直線的な動きならどうってことない。こんなもので俺をぶっ飛ばすつもりなのか」
「あんた本当に気に食わない奴になったわね。不動心なくしてから、いらんこと喋り過ぎなのよ。本当にムカつくわ。…シュート!」
分体が、穴倉の傍らで浮遊する。
ルリは、細い水の線を穴倉に向かって噴射する。
「圧縮した水。触れれば切断されるか」
穴倉はこれもかわす。
だが、水の射線上には分体がいる。
その分体が水を吸収しながら、さらに他の分体に水を撃つ。
撃たれた分体はまた違う分体へ水を撃つ。
そして次の分体へ。
さらに次の分体へ。
「水の檻か。」
「シュート!」
間隔を狭め、穴倉の動きを制限しながら、分体が穴倉の角を撃つ。
穴倉は硬質化させた触手で水を防ぎながら熱線砲を撃ち、水線の一部を打ち破る。
角の破壊は免れるが、蒸発した飛沫が穴倉の顔、そして体にかかる。
「ぐっ」
「角を触手で守ったわね。あんたの魔力回復には、やっぱりその角が必要なのね。角を破壊してる間は、魔力回復は出来ない。まぁ、何秒かだけど。違う?」
穴倉は答えない。
硬質化させた触手を重ね、角を守るシールドにする。




