ラーラの采配
「ゲギャギャ、火…」
メが火球を放とうと魔力を集中し始めた掌へ、ミサが気を込めた矢を番え、放つ。
「長距離狙撃矢!」
メは火球を盾に使い、矢を防ぐ。
その瞬間、矢は火球に吸い込まれながら溶かされ、火球は消える。
「おのレ、相殺とハ…」
矢を防いで火球が消えたのは、メにとって悪い結果だ。
「小生意気ニ、気など纏わせよっテ…」
メの繰り出す火球は、普通の矢が相手ならば、二十発ほど防いでも、その火力は衰えはしない。
ましてや、メに比べたら低レベルのミサの矢など問題になるはずがなかった。
だが、ガインの指導により、ゲブ族の精鋭の中には、修道の力を応用した闘法を使える者がいる。
ミサも、練った気を矢に宿らせる術を修練し、精度は低いながら扱える一人であった。
「うおおおおっ!」
「ギャ!?」
ボルゾの、咆哮しながらの盾での突進をまともに食らってしまうメ。
魔法が消えた、無防備な所への一撃というものは、防ぎ様がなかった。
同種族の場合、LV差というものは絶対的な強さになって現れる。
だがそれは、一対一の場合だ。
低レベルとはいえ、愚直に突進スタイルを遵守する戦士と、気を矢に込める弓使い相手に、幽閉明けの魔法職が一人で対抗というのは、些か分が悪い。
メの脳裏に後悔がよぎった。




