表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/2233

消えた背中、残る背中

服部あずみが、アリスの死の映像を見て、二週間が経った。

ふさぎ込み、家に引きこもっていた服部のもとに、ゴードンと妻エルザが訪れる。

畳に伏せって、泣き続けるあずみの肩に、エルザがそっと手を置く。

あずみは、エルザの手に自分の手を重ねる。

エルザの目にも涙が溢れる。


「あずみちゃん、たまには何か食べないと…」

「お母さん、私、アリスのこと、もっと大切にしとけばよかった…」

「あずみちゃん…」


この二週間、あずみも、エルザも、何も手につかなかった。


ゴードンは、泣き崩れる二人の震える背中を、やりきれない思いでしばし見つめた後、そっと外に出た。

そして天を仰ぎながら目を閉じ、声を圧し殺して、一筋の涙を流した。


「店を開けないとな…」


目を開けて、何気なく店の角を見ると、店の軒先に出ている丸椅子が、角の向こうから半分ほど見えた。

いつもアリスが座っていた椅子だ。


丸椅子を見ると、ゴードンの目に涙が溢れてくる。

椅子にはいつも、アリスが座っていた。

がに股で足を開いて座り、腕を組み、金髪をたなびかせているアリスの後ろ姿の幻影が、浮かんでは消えた。


「ぐう…、うっうう…、ぐ…ああ…」


嗚咽を漏らしたゴードンは、壁に手を着き、その手の甲にこめかみを付けた。

椅子から目を離せなかった。


「ああ…あああ…ああ…」


口が悪く、がさつで、ずぼらで、怠け者で、図々しかった。

でも、まるで本当の娘の様だった。

そこにいるのが、当たり前になっていた。


涙溢れるままのゴードンは、嗚咽が漏れるまま、恰幅のいい背中を弱々しく丸めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ