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───助けようとも!

ンカフを離れ、大都市バンハールを目指していたガインは、十日程野宿しながら、街道沿いの森を歩いていた。人間なら、馬なり、乗り合い馬車なりで移動出来たが、ガインには馬術を学ぶ機会がなかった。師が馬に全く乗れず、馬術スキルを持たなかったので、ガインも当然の様に乗れない。人間と異なる姿から、乗り合い馬車にも乗せてもらえるはずがない。それどころか、昼間に街道を歩くことすら憚れるのが、ゴブリンであるガインの置かれた立場だった。


この十日あまりの道中の間、ある者はガインを警戒して避け、ある者はガインを倒そうと挑んで来た。隣人として接してくれるのが当たり前のンカフが特別だったのだと、ガインは思い知らされた。これから先、どれ程の人間に、汚いものを見る様な目で見られるのだろう。ガインは、大都市バンハールへの足取りが重くなり俯いている自分に気付き、自嘲気味に、ふっ、と笑った。心の弱い自分を、情けなく思った。




バンハールまでの道中半ば程のところで、ガインは、馬車が野盗に襲われているのを発見した。そう豪華な馬車ではないが、個人所有の馬車の様だ。乗っているのは、どこぞの大店の商人か、下級貴族だろう。野盗は七人。馬車は進行方向を遮られ、停止を余儀なくされていた。御者が細剣で応戦していたが、多勢に無勢で今や虫の息だ。そして中からは、豪奢ではないが身なりの良い貴婦人と、娘とおぼしき子が引きずり降ろされた。貴婦人は悲鳴をあげ、娘は泣き叫んでいる。リーダーとおぼしき男が、片眉を下げ、口を歪めて開いた下品な笑顔を浮かべながら声をあげる。

「ガキも女も逃がすなよ!金持ちの変態に売るんだからな!ガキは手ぇつけんなよ?女は殺さなきゃ好きに遊んでいいぞ!」

野盗どもから下品なよろこびの声があがる。


娘が叫んだ。

「だれか、たすけてぇ!」


───助けようとも!


「御者が殺されることも、母娘が尊厳の全てを奪われることも、(おれ)が許さん!」

ガインはすべる様に駆けて森から飛び出し、野盗たちと馬車の間に割って入って、腹の底から叫んでいた。

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