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食えねえ奴
シャサが目をひん剥いてあずみを睨む。
尋常でない殺気を放っているが、あずみは冷静に視線を合わせ、そして外した。
だが今度のあずみはシャサを視界に残している。
挑発的な物言いをした手前、シャサの攻めの行動を警戒して視界の端に入れているのだ。
シャサも、そんなあずみに対して気持ちを引き締める。
あずみの動きを警戒するシャサ。
なぜならば、あずみは速い。
直線的な最高速でいえば、シャサよりも速い。
そのあずみがシャサの動きを警戒したのだ。
となると、生半可な攻撃は当たらないと見た方がいい。
(本当によ、食えねえ奴だぜ)
感情のままにいたはずのシャサは急激に落ち着き、あずみに向かって踏み込むタイミングを探り始めている。
だが、あずみには隙がない。
いつでも動く準備が出来ているのが分かる。
故にシャサは、軽々しく踏み込めない。
(単純な速さ比べじゃ勝てねえな。 それどころか、隙を作り出さなきゃ攻撃なんて通る気がしねえ。 ……普通ならな)




