頼れるお姉さんをナメるなよ
ユウの目的はネネクレアの奪回と脱出。
ユウ自身はネネクレアと縁もゆかりもなくても、頼まれて引き受けた以上、完遂しなくてはならない。
「次はどいつ、かな」
傷が少しずつ塞がってきた。
それは常人の目にも分かりやすい程の速さ。
その回復力に誰もが目を見張る。
だが、ユウの感覚では遅い。
それも、とてつもなく遅い。
普段のユウならば、瞬きの間にここにいる全員を制圧することも可能だ。
圧倒的な強さを見せつけ、食事を奢れと迫り、無駄な血を流させないのが常。
その強さがあったからこそ、タツキとゴウも依頼して来たはずだ。
なのに謎の不調。
気分屋のユウはこれでだいぶ嫌気がさして来ている。
だが、ここで投げ出すことは出来ない。
タツキとゴウとはほんの一時の縁で知り合った。
こういう縁こそ大切にしなくてはならないとユウは考える。
というのも、ユウは、自分の人生は幼子の頃に終わるはずだったと思っている。
だが聖騎士ガインと出会って救われ、共に生き、そして今の超人勇者の道へと繋がった。
あの出会いなくばユウの今はない。
ユウがガインの強さに憧れ道標とした様に、この少年たちもユウを道標にするかもしれない。
この縁がきっかけになって、道がひらけるかもしれないのだ。
だから、戦い抜く背中を見せなければならないと思う。
ユウと彼らは、年齢で言えばそう離れていないが、ユウには前世代の自負が既に芽生えつつある。
故に今回は。
「頼れるお姉さんをナメるなよ」
退く気にはならないのだ。




