戦いにおける理
ユウはカワベの様子を見て構えを解いた。
「不完全だけど、今の私のところまでは来るだろうな」
ユウの言葉はまさに高みから見下ろすもの。
それは圧倒的な最強の自負があるが故の言葉。
だが、現在の力を把握してもいる。
それはよくないことだと、ユウは感覚的に知っている。
「ま、見ておけ少年たち。 腹が減って力が出なくても、勇者のお姉さんがどれだけ凄いかをな」
うそぶくユウだが、これは本心である。
今、ユウの腹が減っていることと、力が出ないことには、直接的な因果関係はない。
だがそれをユウは繋げて考えている。
そうすることで真なる自分として戦えると考えている。
「ふぅー……」
大きく息を吐くユウ。
そして構えを解いたまま、いや、さらに肩の力を抜く。
ユウは幼少の頃から、壮絶な修行を繰り返し、この世界の一つの理に気付いた。
とはいえ、あくまで戦いにおける理ではあるし、気付いたと言っても、感覚的にである。
己を信じ、力を信じ、それを心の核、魂にして、魂を燃やし、それを肉体の隅々まで行き渡らせて戦う。
これは泥島や穴倉が魔力を体に循環させるのと似ている。
いや、構造的には同じと言ってよい。
だが、魔力と違い、魂は不確かなもの。
その不確かなものを力に変換するには、元々の心の強さが必要だとユウは考えている。




