借り物だけどさ
吹っ切れると女は強いとは言うけど、と泥島は心の中で呟いた。
あずみの顔には余裕がなくて、レインの顔には余裕がある。
泥島にはそう見える。
だが、レインのスピードが上がる度に、あずみのスピードも徐々に上がる。
そして何秒もしないうちに並ぶ。
目まぐるしい攻防を見ているうちに、泥島も少しずつ目で追える様になってきた。
だが、あくまで目で追えるだけだ。
あれほどの動きが自分に出来るとは思えない。
レインと攻防を繰り広げられるほどの武の経験値もない。
だから結局は能力値頼りになる。
……はずだ。
しかし、しかしだ。
「俺も諦めたくなくなったよ」
泥島の中で意識改革が起こり始めている。
あずみが、本来ならばかなわない相手とやり合っている姿が、泥島の心を引っ張り、引き上げ始めているのだ。
「俺はさ、お前みたいに努力してるわけじゃないしさ、力も借り物だけどさ」
泥島の中に埋め込まれている聖金貨には、魔力が込められている。
アリスの魔力が。
聖金貨は泥島の中で光を発し、その光が、力が、魔脈を通して体の隅々まで届く。
「それを使えるのが俺の力ですかね」




