あり得ないことと認識の違い
この場の者たちがレインに驚いているのは、幾重にもあり得ないことが重なっていたからだ。
まず、これまで何の職も取っていなかったこと。
そんなことは通常あり得ない。
人間ならば、誰もが何らかの職を生まれながらに持っているはずなのだ。
いわば、誰もが1からのスタート。
レインは0。
なのに天才ともてはやされる強さを持つ。
あり得ないことだ。
更に、固有の能力を持っている。
硬貨に魔力を流し込み操る。
職がないのに能力を持つなど、これもあり得ないことだ。
ゲドが呟く。
「バカな……。 レイン、おめえは騎士のはずだ」
「鑑定対策の魔法で偽装していたんですよ」
職がないのに魔法を使う。
これもあり得ないことだ。
それどころか、そもそもが。
「鑑定対策の魔法……?」
忍たちがざわめく。
全てを闇に隠す忍といえど、そんな魔法は使えないし聞いたことがない。
カワベでさえもだ。
だが服部あずみが、さも当然の様に言う。
「え? アリスは何か使ってたでござるよな?」
「そうだね」
そして泥島が頷いた。
この世界の人間と異端者であるあずみたちの間で、あまりにも認識が違う。




