あんまり逃げないんだ?
レインは名門ウインターウッド家の出だ。
忍とは身分の差がある。
そして能力差がある。
シャサたちがいくら有能な忍とはいえ、レインは戦闘能力その他で忍たちを大きく凌ぐ。
だがゲドはそうではない。
戦闘能力でシャサたちに及ばない。
だからこそ、大量殺戮の場に居合わせてほしくない。
身分ある者が殺戮者に敗北したとあっては名折れであり、その時、評価が下がるのは強者のレインではなく、年長者で“混沌”の参謀とされている叔父のゲドなのだ。
名門の出というのは、経歴が枷になるもので、それを叔父は一身に背負うはずだ。
平民が妬み嫉みから名門貴族を糾弾する図式もあるが、何よりこの叔父は、甥であるレインの盾になろうとする。
頭脳明晰で老獪なゲドが立ち回ればどうにか出来るかもしれないが、甥の為となると、意外とそれをしてくれない人だ。
自己犠牲でもってどうにかしてしまおうとする。
結果、泥を塗られるのはゲドだけになる。
プラスの出来事はレインの手柄となり、マイナスの出来事はゲドだけにしわ寄せが行くのはごめんだ。
特に大量殺戮を防げなかったというケースは絶対に避けたい。
だからこそ、泥島に正面切って対峙するのだ。
その決意は泥島に伝わる。
「ふーん、あんまり逃げないんだ?」
感情がこもっていない泥島の言。
声が張られておらず棒読みで緊張感がない。
レインがシャサたちを下に見る様に、泥島もレインたちを見下している様にレインには思えた。




