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絶望のさ中にある
レイン・ウインターウッドは天才児。
レインは、誰からもそう言われて育ってきた。
やることなすこと上手く行ったし、それが当たり前だと思っていた。
いや、当たり前だった。
だが、今はどうだ。
目の前には才能以前に凄まじい天運に恵まれた超人勇者ユウがいる。
超人というだけでも珍しく、勇者となれば更に珍しい。
だが、目の前にいるユウは、超人で勇者なのだ。
存在自体が奇跡といっていい。
その奇跡の存在の前では、これまでに培った己の心技体すべてがとてつもなく頼りなく思えた。
目の前のユウはどこか精彩を欠いているが、しかしレインは、実力差をかんじている。
「……っ、ふふ」
だが、レインは笑う。
それは作り笑いであり、表情も幾分硬いもの。
しかし、この場にいる忍たちは、これが作り笑いだとは思っていない。
「さすが天才だ」
「レインさえいれば勝てる」
「味方で本当によかった」
忍たちの楽観視と、希望を見い出した発言が並び、だからこそレインは絶望のさ中にある。




