踏み台にする為
「ちっ」
エタースは舌打ちと共にゴウの後ろに回り込む。
巨躯でありながら素早さでゴウを上回っている。
そのまま背中に踵を炸裂させ、蹴り押した。
「がっ!」
痛みと衝撃でゴウの口から漏れた声は、短いながらその苦痛をかんじさせるもの。
その声に反応したタツキは、ゴウに目を向けかける。
エタースはそれを見て、甘いと思った。
(ガキどもは殺し合いに慣れちゃいねえ)
そう思い、ほくそ笑む。
エタースは汚れ仕事など数え切れない程こなして生きて来た。
身近な人間が目の前で死ぬ姿を何度も見て来た。
だからこそ思う。
(俺だったらツレなんざに意識は向けねえ。 殺ることに集中する)
「……!?」
気付くと、タツキの姿が前方にない。
今の今まで、エタースが蹴り飛ばしたゴウの向こう側にいたはずなのに。
(!)
「上かあっ!」
タツキはいつの間にか上方に跳んでいた。
ゴウの背中には、エタースのカカト蹴りのあと、そしてタツキの足裏の形がついている。
タツキがゴウに目を向けたのは心配が理由ではない。
踏み台にする為だったのだ。
タツキは折れた剣を大きく振りかぶっていて、今まさに振り下ろすところ。




