でも、覚悟決めて来てるんで
タツキは一瞬で間合いを詰めた。
鞘走る折れた剣は加速してエタースに襲いかかる。
その速さは先日の比ではなかった。
「くそッ!」
かろうじて避けたエタース。
冷や汗を背中にかんじながら、ネネクレアを人質にしようと叫ぶ。
「止まれガキッ! こいつを殺すぞ!」
だがタツキは全く聞く様子がない。
むしろ、更に加速する。
「おい、聞けって!」
エタースの呼びかけもむなしく、剣はとてつもない速さでエタースの首筋に向かって水平に振るわれた。
だがそこにレインが割って入る様に現れ、タツキの剣を指でつまんで止めた。
「手加減しませんよ」
そして拳を繰り出す。
手加減なしのレインの一撃。
食らえばタツキは即死だ。
防御しても防御ごと死ぬだろう。
とはいえ、避けられる速度の拳ではない。
終わったとタツキは思った。
しかし、終わりはしない。
「ぐぅっ!?」
殴り飛ばされたのはレインだった。
殴ったのは巨大な土の拳。
いや、石の拳か。
「ほんとはお前とは戦いたくないんですよ」
そう吐き捨てる泥島は、心底嫌そうな顔。
だが、怯みは微塵もない。
「でも、覚悟決めて来てるんで」
そう言って目力強く、強く、強くレインを睨んだ。




