分が悪い
言うが早いか、拳撃を繰り出している。
ロイドの手甲は拳を覆う部分が厚く盛り上がっていて、そこには円筒型の魔弾が右手三発、左手三発の計六発埋め込まれている。
それをユウに炸裂させんとしているのだ。
だがユウは難なくいなした。
ロイドの繰り出した重い一撃を、まるで赤子の手をひねるが如く、軽やかに。
「魔弾の拳なんぞが私に当たるものかよ」
冷静にそう耳打ちし、ユウは剣を振ろうとした。
ロイドの首筋に向かって、だ。
ユウは、ロウ・リ・ネイティスの王族であるロイドを殺すことに何の躊躇もない。
「終わりだ」
故に、死を宣告したユウ。
しかし対するロイドの瞳には、焦燥も絶望もない。
ロイドの鋭い眼光はユウを見据え───!
「俺が終わっても好きにはさせん」
いや、ロイドの目はユウを見ていない。
手甲を天に向かって突き出すロイド。
そしてその目も空を見る。
瞬間、手甲から魔弾が一発、上空に向かって撃ち出された。
魔弾はすぐに爆散し、閃光が空にはしる。
信号弾の役割を果たしたのだ。
里中の忍が一斉に空を見上げて、ロイドが放った閃光を見ただろう。
それに気付くユウが声を張り上げる。
「いかん! 君らは逃げろ! すぐに……ッ!」
「ええ。 すぐに僕らが駆け付けます」
レイン、シャサ、エタース、更には。
「超人勇者がおるなァ」
「そういう貴様も超人であろう」
「そうじゃな」
カワベまでもが、ロイドの助太刀に参じた。
ユウ一人ならば、強者の多勢など意にも介せず大立ち回りするところだ。
しかし、目的はあくまでネネクレア奪還。
そしてタツキとゴウの護衛だ。
それを思うと、苦笑いになるユウ。
(少年たちは戦力にならん。 いや、足手まといになるだろうな)
「……ちと分が悪いな」
「ちとじゃと? 大いに、の間違いじゃろ」
そう返したカワベの傍らに、服部あずみまでもがやって来た。
「おじいちゃん、こ奴らは?」
「侵入者じゃ。 その娘を狙」
しかし、そこに更に、上空から何者かが飛来した。




