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薄刃陽炎
とはいえ、ユウの意識がロイドに向かっているのは間違いない。
それはユウと対峙しているロイド自身が強くかんじている。
何故こんなにもユウから怒気をかんじるのかと戸惑いそうなぐらいだ。
だが気持ちを立て直すロイドは、確固たる闘志をもって張り詰め、ユウの次撃に備える。
いや、反撃に打って出た。
「薄刃陽炎」
そう呟いたロイドの体が一瞬揺らめき、次の瞬間には四人に分身していた。
「ほう」
少し笑い混じりのユウの目に映るロイドの分身たちはまさに陽炎の様に揺らめいていて、そしてロイドだけは揺らめかずにいる。
ロイドの本体と分身体の違いは一目瞭然、簡単に見分けられる。
並みの戦士ならば分身のクオリティの低さに油断するところだが、ユウは笑い混じりでロイドを見てはいても油断はない。
この術を、技を知っているからだ。
「貴様は針を使わぬのか?」
「あいにく俺の得物は点穴針ではない。 もっぱら小太刀だ」
「そうか。 ま、どちらでも一緒だがな」




