どこに向かってるんだ
すうすうと寝息をたてるネネクレア。
馬車の振動はかなりのものだが、起きる様子はない。
「のんきなもんだな、子供は」
「ふん、全くだぜ」
相づちを打ったのはシャサ。
パーティ“混沌”の中でも実力者。
のはずだった。
「ちっ、憎たらしい寝顔だぜ」
そう吐き捨てるシャサは大きくため息をついた。
二の句を継ごうとするが、しばし口を半開きにしたまま、ただ呼吸を繰り返す。
何か言おうとしているのだと察し、ジャービルが無言で待っていると、シャサが声を出した。
「はー……。 今日はとんでもなく疲れたぜ。 早くゆっくり休みてえ」
その言葉を聞いたジャービルは、何かを言う気にはなれず、無言のまま。
馬の蹄と荷車の軋みだけが響く。
馬車の振動の中のシャサは、気を抜けば一気に眠ってしまいそうだ。
レイン以外は誰もが同じく疲労している。
ケガもひどいエタースに至っては、完全に眠りこけてしまっている。
普段ならエタースに向かって皮肉の一つでも言うシャサだが、今はそんな気になれなかった。
「里に着いたら修行のやり直しだ。 考えたくねえけどよ……」
「里……? 俺たちはどこに向かってるんだ?」
「俺の故郷の里だよ。 忍の里」




