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ここから去れでござる
(全く、気に食わない奴ばかりでござるな)
あずみは、この場にいる“楔”の面々の顔をゆっくりと見渡した。
しかし、楔の誰もがクマガイに注目していて、あずみのことは見ていない。
それは、クマガイの強大な力を肌でかんじているからこその反応。
服部あずみも強いが、今のクマガイは次元が違う。
しかも、以前のクマガイとは性格も変わった様に見える。
あずみは、クマガイに凄味と余裕をかんじて、嫌悪感をこれ以上ないくらいに込めた目を向けた。
視線をかんじたクマガイもあずみを見るが、たじろぎもせず、沈痛な面持ちで目を閉じる。
これは、あずみの視線に対しての、クマガイの心の表れだ。
(嫌われてるよなー、やっぱり)
クマガイは、造られた記憶の中の自分を思い返す。
卑屈で卑劣な前世のクマガイを。
(造られた記憶の俺が嫌われるのは仕方がないけどさ、本当の俺じゃないのにそんなに睨まれてもね……)
クマガイを睨む服部あずみが口を開く。
「クマガイお主、ここから去れでござるよ」




