クマガイとザハーク
「……というわけだよ」
話し終わったクマガイが目を瞑る。
しばらくの沈黙。
誰もが神妙な面持ちとなり、何も言葉を発しない中、服部あずみだけは、げんなりとした顔で、変わらずクマガイを軽蔑の眼差しで見ていた。
あずみにとってのクマガイは、信用に足る者ではない。
「はいはい、すごいでござるな」
故に、当然の様にクマガイの話を真面目に受け止めようとしない。
その態度に、以前のクマガイならば即座にキレるところだが、今のクマガイはそうはならない。
「信用されない、か。 ま、仕方ないね」
そう言ったクマガイは空を見上げる。
夕闇が迫る空とクマガイの体毛が溶け合う様に同化している。
真剣な表情のクマガイは、しばらくそのまま空を見ていたが、ふと視線を下ろし、ツェゲンたちに言い放つ。
「お前ら、それなりの組織にいるみたいだな」
鑑定機能でツェゲンたちの経歴を覗き見するクマガイ。
その目に映る情報の中にある共通の組織名。
「ザハーク教団、か」
それは、デシネが司祭として君臨する組織だ。
クマガイにとって、デシネはアリスを葬った存在と等しい人物。
腹いせにこの場にいるザハークの者を全員皆殺しにすることも頭をよぎったが、しかし、クマガイは「ふん」と鼻を鳴らすと、「お前らに邪神の勅命を与える」と静かに言い放った。




