アリスが死んだら
そんなクマガイを穴倉は眺め続けるが、何か特別な感情があってのことではない。
他に目をやる様なものがないから、クマガイに目を向けているだけだ。
ただ、穴倉は、クマガイと自分との違いを見つけて、そのことについては考え始めていた。
(クマガイの方が人間っぽいのかもな)
アリスの絶命で闘志を燃やしたクマガイ。
何か張り詰めていた糸が切れてしまった穴倉。
この二つを比較し、心が暗く重くなってゆく穴倉は、眠気にも似た感覚に襲われながら目を閉じた。
頭がぼんやりとして、何も考えられない。
穴倉は、“これが絶望を受けた状態か”と理解し、打ちのめされた。
普段の穴倉ならば、これも人間的な感情だと内心喜ぶところだが、そういった捉え方にはならず、それどころか、自分の心を見つめることなく、ただこれからアリスをどうするかだけを考え始めていた。
(アリスが死んだら、誰がアリスを生き返らせるんだ? ……カプリスか? ……そうだな、カプリスなら生き返らせられるだろう。 どこにいるかは分からないけど)
穴倉の目的が決まる。
カプリスを探すこと、だ。
目的が決まると、多少の活力が湧く。
活力が湧けば、頭もにわかに働く。
それはまさに、穴倉が欲する“人間的”な状態とも言えたが、それと気付かずに通りすぎてしまう。
「……」
目を閉じたままの穴倉は、池中瑠璃と戦った時のことを思い出す。




