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もうこざかしいマネはよせ
黒の操縦者はこれまで、他者の心をぐらつかせて暗躍して来た。
戦闘をしながらも、心理的な揺さぶりをかけることを忘れない。
それはクマガイが相手でも構わない。
「誰かに造られた自分を、そのままにしていていいのか?」
黒の操縦者の声は、静かで染み渡る様な落ち着きがある。
普段のクマガイならば、耳を傾け、そのまま侵食されてゆくところだ。
だが、今回はそうはならなかった。
他者に心理戦を仕掛けるのは、操縦者のしたいことというわけではなかったが、やらざるを得なかった。
何故ならば、黒球の能力が、不安定な相手の心を侵食することだったからだ。
だから揺さぶりはやめない。
「この世界の真実を知りたくはないか? 一緒に来い」
かつてのクマガイならば、魅了されていたかもしれない。
だが今のクマガイの確固たる心は動かせない。
デシネを見るクマガイの眼力が、際限なく鋭くなってゆく。
「もうこざかしいマネはよせ」
そしてクマガイの口をついて出た言葉は、真正面からぶつかろうとするクマガイの心そのもの。




