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俺は俺だからさ
黒の操縦者は、言葉の意味が分からず、怪訝な顔でクマガイを見る。
しかし、その表情はこの世界の誰の目にも届かず。
クマガイの目に映るデシネは、クマガイとの激突に顔を歪めているのみだ。
「強いだけって、虚しいんだな」
更に言葉を発するクマガイ。
この言葉で何かを揺さぶろうという意図などなく、ただ思いのままの言葉を口にしただけだ。
「お前はどうだよ? 今の自分の強さに満足してるか?」
クマガイは、現在の自分の強さに、不自由さをかんじている。
いや、強さという概念そのものの不自由さをかんじている。
クマガイは強さを得たが、そこにクマガイの望む力がないからだ。
「今の俺は強いよ。 強いけどさ。 でも、何も出来ないわけじゃん」
周りが倒れる中、クマガイは何も出来なかった。
誰かを回復させることも、誰かを生き返らせることも。
「アリスみたいにやれたらさ、よかったんだけど。 でも出来ないじゃん、俺は俺だからさ」




